浮立

浮立（ふりゅう）

浮立は、佐賀県を主に長崎県や筑後地方の一部で受け継がれている伝統的な民俗芸能です。この芸能は、主に太鼓や鉦などの楽器を使用し、衣装や面をつけた演者たちがその演奏に合わせて踊ります。浮立は中世の風流をルーツに持ち、田祈祷や雨乞い、さらには収穫祭といった重要な儀式において踊られてきた歴史があります。元来は主に農業に従事する人々によって行われていました。

踊りの際には笛、大太鼓、小太鼓、モリャーシ（締太鼓）、鉦、ささらといった楽器が奏でられ、これらは地域によって多様な曲と動きに反映されています。具体的には、村内を練り歩く道浮立と神社などの境内で行われる庭浮立に分けられ、いずれも独自のスタイルを持っています。庭浮立では、それぞれの演目が「おもて」と「返し」の二部構成になっていることが特徴です。過去には、一つの地域で15から20種類の曲が存在したこともありましたが、現代では様々な社会的・経済的変化により多くの曲や舞が忘れ去れ、復元が難しくなっています。

浮立の中でも特に「面浮立（めんぶりゅう）」や「天衝舞浮立（てんつくまいぶりゅう）」などの形式があり、地域差も顕著です。面浮立は、鬼の面と赤熊の毛皮を着用した踊り手が特徴で、佐賀県南部から長崎県にかけて広がっています。この形式の起源として、歴史的な戦闘の伝説が存在し、面をつけた状態で勝利を祝い踊ったことが伝えられています。一方で、天衝舞浮立は、三日月形の帽子を被った踊り手による特徴的な舞いで、特に旧佐賀郡から三養基郡にかけて見られます。

浮立は地域によってさまざまなスタイルが存在し、佐賀県内の特定の浮立が国の選択無形民俗文化財に指定されています。代表的なものには、佐賀市富士町の市川の天衝舞浮立や、鹿島市七浦の音成の面浮立、唐津市の広瀬浮立などがあります。長崎県でも、井崎まっこみ浮立や木場浮立、坂本浮立などがあり、各地域で独自の発展を遂げています。

また、福岡県でも独自の浮立が存在し、八女市の八女津媛神社の浮立や、みやま市の佐野浮立などが無形民俗文化財として知られています。浮立は、祭りや信仰の行事において地域コミュニティの団結を促進する重要な役割を果たしており、代々受け継がれてきた文化的遺産として、今後もその魅力を伝えていく必要があります。浮立を通じて、地域の歴史や伝統が生き続けていることを知ることができ、今後の発展も楽しみです。

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