海よりもまだ深く

映画『海よりもまだ深く』

『海よりもまだ深く』は、2016年5月21日に公開された日本映画で、監督は是枝裕和。主演には阿部寛が起用され、物語は団地を舞台に、売れない小説家の篠田良多と彼の母、離婚した元妻、そしてその息子との複雑な関係を描いています。キャッチコピーは「夢見た未来とちがう今を生きる、元家族の物語」であり、彼らの日常の中に潜む切なさや後悔が描き出されています。

この映画は、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品されただけでなく、第26回フィルムズ・フロム・ザ・サウス映画祭（ノルウェー）ではシルバー・ミラー賞という最高賞を受賞しました。

ストーリー概要

物語は、作家志望でありながらも過去の栄光から遠のいている篠田良多を中心に展開されます。良多は、かつて島尾敏雄文学賞を受賞したものの、その後15年間は満足のいく成果を出せず、今では「小説のリサーチ」を名目に興信所でなんとか生計を立てている状態です。出版社からは漫画の原作を依頼されるものの、プライドが高く、純文学作家としての道を追い求める彼は、簡単には手を出そうとしません。一方で、ギャンブルが好きな彼は、わずかな収入をその行為に費やし、いつも金欠に悩まされています。

そんな状況に愛想を尽かした元妻の響子は、離婚以来、月に一度、息子の真吾に会わせることだけを条件に養育費を求め、良多との接触を最小限に抑える生活を送っています。それでも良多は、親としての感情を持ち続け、真吾に会うたびに何とかしてプレゼントを用意します。

ある日の台風接近時、良多は月に一度の息子との面会日を迎えます。しかし、響子は冷たい態度を崩さず、二人はぎくしゃくした会話を交わすことになります。天候の崩れを心配する中、三人は一時的に淑子のアパートに宿泊することに。

ここで描かれるのは、良多と真吾の親子関係で、信頼し合いながらも距離がある彼らの様子です。台風の中、二人は公園に出て駄菓子を楽しみながら、将来について語り合います。この微妙な親子のやり取りが、良多に自分自身を見つめ直すきっかけとなり、彼の内面的成長を促進します。

主要キャスト

この作品のキャストには阿部寛を筆頭に、真木よう子（響子役）、小林聡美（姉・千奈津役）、リリー・フランキー（康一郎役）など、多彩な俳優陣が揃っています。特に樹木希林が演じる良多の母・淑子は、その存在感と温かみで観客の心をつかみます。

音楽とスタッフ

音楽はハナレグミが担当し、映画の感情を深める役割を果たしています。主題歌「深呼吸」は、作品のテーマと良多の感情に密接にリンクしており、是枝監督が自身の思いと重ねて監督したミュージックビデオも公開されています。

本作は、是枝裕和の独自の視点と演出によって、家族の絆と孤独、そして人生の選択の重さを見事に描き出しています。観る者に深い感動を与えるこの作品は、優れた映画として多くの支持を集めました。

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