海南島事件

海南島事件とは

海南島事件（かいなんとうじけん）は、2001年4月1日に発生した、アメリカ合衆国と中国の軍用機が南シナ海上空で衝突した事故を指します。この出来事は、両国の関係を一時的に緊張させました。

事件の詳細

事件は、中国標準時の午前8時55分、海南島から110キロメートル東南の海域で起こりました。当時、アメリカ海軍のEP-3E電子偵察機が中国の排他的経済水域内で無線通信の傍受を行っている最中、中国人民解放軍海軍のJ-8II戦闘機と接触し、衝突しました。J-8IIは墜落し、そのパイロットは行方不明となりました。

一方、EP-3Eも大きな損傷を負い、近くの海南島の飛行場に不時着しました。この際、搭乗していた乗員は中国当局に身柄を拘束されることとなりました。特に中国側のパイロットである王偉の最後の言葉が非常に印象に残ります。彼は「81192コピー。私はもう帰還できない。君たちは続けて前進せよ。」と言い残したとされています。これは国家の発展を願う響きを持っており、中国国歌にも通じる言葉といえるでしょう。

背景と反応

この事件が起こる直前、米中関係は非常に冷え込んでいました。1999年のコソボ紛争において、アメリカのB-2爆撃機が中国大使館を誤爆した事件が影響しており、中国国内での対米感情は悪化の一途をたどっていました。また、アメリカのブッシュ政権が中国を「戦略的競争相手」と位置づけたことも、両国の軍事的緊張を高める要因となっていました。

海南島事件に対する反応は双方で異なりました。中国政府はアメリカの軍用機が領空を侵犯したため衝突が発生したと主張し、アメリカ側は中国機の行動を挑発的だったと反論しました。このため、米中間での言い争いが続くことになります。最終的には、アメリカが中国に謝罪する書簡を送り、5月24日に機体の返還が合意されました。

事件のその後

事件後、返還されたEP-3Eは機体に収めていた情報が抹消されたと考えられていますが、中国側の調査があったため、アメリカ軍は偵察システムの見直しを余儀なくされたとも言われています。こうした形で、事件の原因については今なお議論の余地が残ります。この状況は、米中間の軍事的関係を根本的に見直すきっかけにもなりました。

アメリカ同時多発テロ事件以降は、米中の協調が進み、ブッシュ政権は中国を「責任ある利害関係者」として位置付けるように方針を転換しました。

この海南島事件は、軍事的な緊張が高まる中で発生したものであり、国家間の関係がどのように影響を受けるのかを考えさせる重要な出来事であったといえるでしょう。

もう一度検索