海洋化学

海洋化学とは

海洋化学（かいようかがく）は、海洋に存在する各種物質や生物に関する化学の学問です。この分野は、海水の性質や循環、さらには生物の生態系との関連性を探求することを目的としています。また、下層大気のエアロゾルと呼ばれる微細な粒子が海水に化学物質を供給するメカニズムについての研究も行われ、広義には海洋化学に含まれています。さらに、海洋生物から医薬品などの有用物質を抽出する研究も盛んに行われていますが、これには水産天然物化学としての側面もあるため、明確に分けられることもあります。

研究方法

海洋化学の研究は、多くの場合、研究船を用いた航海中の採水によって実施されます。採水器具には、CTD（Conductivity, Temperature, Depth sensor）を装備したフレームが一般的に使用され、これを海水中に降下させて任意の深度で水を採取します。採取した水サンプルは船上で適切に処理されたのち、即座に分析されるか、陸上の研究室に運ばれ、そこで詳細な分析が行われます。

継続的に測定される基本的な項目には塩分濃度、溶存酸素濃度、栄養塩（例えば、硝酸塩やリン酸塩など）があります。このデータは、しばしば乗船した研究者の間で共有されることが多いです。また、日本ではニスキン型、欧米ではGo-Flo型の採水器が広く使われています。近年では、微量金属や溶存有機物質の測定を高精度で行うため、1980年代に開発されたクリーン技術を用いて採水が行われることが一般的です。特に同位体分析など、量が必要な場合には100リットル以上の大型採水器や、現場で使用できる特殊な濾過器が使われることもあります。

研究の細分化

海洋化学はその研究範囲によってさらに細分化され、多岐にわたりますが、必ずしも体系的に分類されるわけではありません。多くの研究が複数のジャンルにまたがるため、相互に関連し合っています。主な研究分野は以下の通りです。

海洋無機化学

海洋無機化学は、海洋中に存在する無機物質の量や形態を探求する学問です。特に太平洋の外洋における各種元素の鉛直プロファイルは1990年代後半に明らかにされ、その後は主に存在形態や生物過程との関連についての研究が進んでいます。

海洋有機化学

海洋有機化学は、主に溶存有機物質の特性を明らかにすることに焦点を当てています。この研究分野では生物海洋学との関連が不可欠であり、特に従属栄養性細菌の研究が進められています。また、1980年代に提唱された微生物環の概念により、この分野は急速に進展していますが、依然として多くの未解明の課題が残されています。

海洋同位体化学

海洋同位体化学は、海水中の溶存ガスや懸濁物質に含まれる元素の同位体組成を調査し、その結果を通じて海水の起源や年代、生物過程に伴う物質循環の理解を助ける重要な学問です。

海洋エアロゾル化学

下層大気におけるエアロゾルの化学組成や特性を明らかにする海洋エアロゾル化学の分野も重要です。エアロゾルによって海洋表層に供給される微量金属が生物生産に影響を与えることが示され、この研究は生物海洋学との関連を深めています。

海洋（水産）天然物化学

この研究分野では、海産生物から有用な物質を抽出し、医薬品や材料の開発に役立てることを目指しています。特にカイメンなどからは未知の有機物質が発見され、中には抗癌作用を持つものが医薬品として使用されることもあります。

関連項目

このように海洋化学は、海水および生物の化学的特性を探求する重要な学問分野です。その成果は、地球環境の理解や新たな医薬品の開発にも繋がることが期待されます。

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