海研5号

海研5号の概要と沈没事故

海研5号は台湾が誇る海洋調査船で、国家実験研究院(NARLabs)が所有し、海洋科技研究中心(TORI)によって運用されています。この船は、海研1号、2号、3号の後に加わる形で、台湾の海洋研究における新たな一歩を象徴する船として2012年に運用が開始されました。

船の建造と設備

海研5号は2008年に高雄市の中信造船にて建造され、2011年6月には進水式が行われました。その建造費は14億6000万台湾元に上ります。2012年には副総統の呉敦義氏が出席して完成式が行われ、同年8月から本格的な運用がスタートしました。母港は高雄市の興達港で、海洋学や海洋生物学に関わる研究はもちろん、メタンハイドレートのような資源探査の任務や、海上風力発電に関する調査も行っています。

船体は、ダイナミックポジショニングシステムを導入しており、強風や荒波が押し寄せる中でも、誤差5メートル以内で定点を維持することが可能です。船内には各種研究室や採取コアの分析作業室が完備されており、研究用の20フィートコンテナラボが5つ搭載できるスペースを持っています。

また、センサーとしては海底マッピング用のマルチビームソナー、サイドスキャンソナー、超音波ドップラー流速計（ADCP）、さらにマルチチャンネル地震システムを装備し、深海の探査も行うことができます。サンプル採集装置には、20メートルピストンコアラーや採水器、プランクトン採集器が搭載され、さらには遠隔操作無人探査機（ROV）も装備されています。このROVは水深3,000メートルまで潜れる性能を持っています。

沈没事故

海研5号がその運用を開始してから2年が経過した2014年、悲劇が訪れました。大気中の粒子状汚染物質に関する調査を目的として、2014年10月9日に安平港を出港し、金門へ向かいました。しかし、10日夕刻には中心気圧900ヘクトパスカルに達する強力な台風第19号（ヴォンフォン）が接近し、悪化する海況の中で澎湖島南東海域で暗礁に接触。結果として、右舷から浸水し、沈没する事態となりました。

台風の影響で非常に厳しい状況下にあったため、海岸巡防署の巡視船やヘリコプターによる救助活動が開始されました。乗船していた45名の乗員は救助され、病院へ搬送されましたが、残念ながら2名の方が亡くなるという痛ましい結果となりました。

海研5号の沈没は台湾にとって大きな損失であり、海洋調査や環境研究の重要性を再認識させる出来事として記憶されるでしょう。

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