海部陽介

海部陽介の人類進化学研究

海部陽介（かいふ ようすけ、1969年生まれ）は、日本の人類進化学の第一人者であり、東京大学総合研究博物館の教授を務めています。彼の研究は、約200万年にわたるアジアの人類進化史にわたり、特に生物学的な視点から化石の形態解析や原人に関する調査に焦点を当てています。彼の業績は、書籍やウェブメディアを通じて広く知られており、多くの研究者から尊敬を集めています。

経歴と業績

アジアの原人研究

1992年に東京大学の大学院に進学後、彼は諏訪元教授に師事し、アフリカの猿人化石に関する研究を展開しました。1994年には、日本・インドネシア合同のジャワ原人調査隊に参加し、馬場悠男氏からその隊を引き継ぎ、アジアの原人化石の発掘調査と形態学的研究に取り組みました。アジアにおける多様な原人の進化を解明し、特にジャワ原人に関して独自の貴重な研究成果を上げました。

彼は、フローレス原人に関しても重要な調査を実施しました。特に、インドネシア及びオーストラリアのチームに招待され、化石の詳細な分析を行い、フローレス原人が大型ジャワ原人の仲間であった可能性を示唆しました。また、澎湖人（台湾の原人）に関しても日台共同での調査を主導し、その独自の特徴を明らかにしました。

アジア人類史の建設

海部は、大学院時代からアジアの人類史に興味を持ち、化石形態学や遺伝学、考古学を融合させたアプローチで研究を進めています。2005年には「ホモ・サピエンスのアフリカ起源説」に注目し、アジアにおけるホモ・サピエンスの歴史を探求するための著書を出版しました。また、2011年に行われた国際シンポジウムでは、アジアにおける人類史の研究を推進し、その重要性を示しました。

日本人の起源と変遷

彼はまた、縄文時代から近現代にかけての日本人の顎骨や歯列の変遷についても研究し、過去5000年間にわたる顎骨の縮小や歯列不正の増加について退化現象とは言えないことを示しました。旧石器時代には、人々がどのようにして日本列島に到達したかという研究も行い、例えば港川人の研究において彼らが海を越えてきた可能性を示しました。

3万年前の航海再現プロジェクト

海部は、『3万年前の航海 徹底再現プロジェクト』を通じて、初期の日本人の航海技術の研究を進めました。彼はプロジェクトの代表として、航海を体験的に探求し、さまざまな実験船を試作しました。最終的に2019年には手漕ぎの丸木舟での台湾から与那国島への航海を成功させ、広く報告しました。この取り組みは、学術研究と民間の協力を結びつける新たな試みとして注目されました。

受賞歴と展示監修

彼の業績は多くの評価を受けており、2023年には日本人類学会賞を受賞、2021年には海洋立国推進功労者表彰を受けています。また、教育的な活動として、さまざまな特別展の展示監修を行っています。

海部陽介の多岐にわたる研究は、日本国内外での人類進化に関する理解を深めると同時に、過去の人間の移動や生活様式についても新しい視点を提供しています。

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