消費者余剰

消費者余剰とは

消費者余剰（Consumer Surplus）とは、経済学における重要な概念の一つで、消費者が財やサービスを購入する際に得る経済的な利益を指します。具体的には、消費者がその財・サービスに対して支払っても良いと考えている最高の金額（最大留保価格）と、実際に市場で支払った金額（市場価格）との差額が消費者余剰となります。

消費者余剰の定義

消費者の最大留保価格とは、消費者がその財・サービスを得るために、これ以上高い金額は支払わないと考える限界の価格です。一方、市場価格は、実際に市場で取引されている価格です。消費者余剰は、個々の消費者にとって、その財・サービスに対する金銭的な評価額から、実際に支払った金額を差し引いたものと解釈できます。

数式で表すと、以下のようになります。

消費者余剰 ＝ 最大留保価格 − 市場価格

消費者余剰の図示

市場においては、消費者の最大留保価格はそれぞれ異なります。ある消費者は特定の製品に高い価値を見出すかもしれませんが、別の消費者はそれほど価値を感じないかもしれません。このため、市場全体の消費者余剰は、需要曲線と市場価格を高さとする水平線との間の面積として図示されます。

需要曲線は、各価格において消費者が購入しようとする財・サービスの量を示します。市場価格が低いほど、より多くの消費者が購入意欲を持つため、需要曲線は通常、右下がりになります。消費者余剰は、需要曲線の下側で、市場価格の水平線より上の部分の面積として表されます。

消費者余剰の変動要因

消費者余剰は、様々な要因によって変動します。例えば、市場価格の変化は直接的に消費者余剰に影響を与えます。市場価格が低下すれば、消費者余剰は増加し、市場価格が上昇すれば、消費者余剰は減少します。

また、政府の政策や外部からの影響も消費者余剰に影響を与える可能性があります。例えば、従量税が課されると、市場価格が上昇し、消費者余剰は減少します。逆に、補助金が支給されると、市場価格が低下し、消費者余剰は増加します。

消費者余剰の重要性

消費者余剰は、市場の効率性を評価するための重要な指標となります。消費者余剰が大きいほど、消費者はより大きな経済的利益を得ていることになり、市場は効率的であると考えられます。

生産者余剰との関係

消費者余剰と対になる概念として、生産者余剰があります。生産者余剰は、生産者が財・サービスを販売する際に得る経済的な利益を指し、実際に受け取った価格（市場価格）から、生産者がその財・サービスを生産するために必要とする最低限の価格（限界費用）を差し引いたものです。

消費者余剰と生産者余剰の合計は、総余剰と呼ばれ、市場全体の経済的な効率性を示す指標となります。総余剰が大きいほど、市場は効率的であると考えられます。

まとめ

消費者余剰は、消費者が市場取引を通じて得る経済的な利益を示す重要な概念です。市場価格の変動や政府の政策など、様々な要因によって変動し、市場の効率性を評価するための指標となります。消費者余剰を理解することは、経済学を学ぶ上で不可欠です。

参考文献
* ジョセフ・E・スティグリッツ、カール・E・ウォルシュ『スティグリッツ入門経済学（第4版）』薮下史郎、秋山太郎、蟻川靖浩、大阿久博、木立力、宮田亮、清野一治（訳）、東洋経済新報社、2012年

もう一度検索