涙をとどけて (スティーヴィー・ワンダーのアルバム)

スティーヴィー・ワンダーの名盤『涙をとどけて』

『涙をとどけて』は、1970年にリリースされたスティーヴィー・ワンダーの重要なアルバムであり、彼のキャリアにおける一つの転機を象徴しています。このアルバムには、心を打つ楽曲が多数収録されており、特にタイトル曲「涙をとどけて」は、全米チャートでポップ部門で3位、R&B部門で2位と大ヒットを記録しました。また、「ヘヴン・ヘルプ・アス・オール」もポップ部門で9位、R&B部門で2位となるなど、多くのリスナーに愛されています。

さらに、ビートルズの楽曲「恋を抱きしめよう」をカバーしたことも話題となり、こちらも両チャートでヒットしました。本作のオープニングを飾る「夢の中の君」は、1970年初めにシングルもリリースされ、スティーヴィーとプロデューサーのヘンリー・コスビー、シルヴィア・モイが共作したものです。スティーヴィーのクリエイティブなビジョンがこのアルバム全体に色濃く反映されており、モータウン独特のストリングスが、彼の情感豊かな歌声を引き立てています。

アルバムの制作に際して、モータウンとの関係は複雑でした。特に、モータウンのプロデューサーとしての決定がスティーヴィーの音楽的方向性に影響を与えていたため、彼とレコード会社との間には軋轢が生じていました。しかし、スティーヴィーは慎重に行動し、他のアーティストの作品に対する評価を忘れることはありませんでした。

また、このアルバムのリリース直前には、スティーヴィーはモータウンとの契約を再度更新しており、次作のプロデュース権を手に入れていました。この時、彼は20歳という若さで、自分のアイデンティティを確立するための第一歩を踏み出していたのです。ビジネス面でも彼は高い要求をし、さらにはほぼすべての楽器を演奏し、アレンジとプロデュースを手掛けるという意欲的な姿勢を見せました。彼の妻であったシリータも、そのサポートに関わっており、スティーヴィーの創作活動を支えていました。

収録楽曲一覧

アルバムは二つのサイドに分かれており、様々なジャンルが取り入れられています。

Side 1

1. 夢の中の君 - Never Had a Dream Come True (Stevie Wonder, Henry Cosby, Sylvia Moy) – 3:13
2. 恋を抱きしめよう - We Can Work It Out (Lennon–McCartney) – 3:19
3. 涙をとどけて - Signed, Sealed, Delivered I'm Yours (Lee Garrett, Lula Mae Hardaway, Wonder, Syreeta Wright) – 2:41
4. ヘヴン・ヘルプ・アス・オール - Heaven Help Us All (Ron Miller) – 3:13
5. 表紙で本はわからない - You Can't Judge a Book By Its Cover (Cosby, Pam Sawyer, Wonder) – 2:32
6. シュガー - Sugar (Don Hunter, Wonder) – 2:52

Side 2

1. ドント・ワンダー・ホワイ - Don't Wonder Why (Leonard Caston Jr) – 4:54
2. あなたのためなら - Anything You Want Me To Do (Hunter, Hardaway, Paul Riser, Wonder) – 2:19
3. マイ・ヘヴン・ウォーク・アウェイ - I Can't Let My Heaven Walk Away (Joe Hinton, Sawyer) – 2:53
4. ジョイ - Joy (Takes Over Me) (Duke Browner) – 2:12
5. 歌がなければ - I Gotta Have a Song (Hunter, Hardaway, Riser, Wonder) – 2:32
6. サムシング・トゥ・セイ - Something to Say (Hunter, Wonder) – 3:26

このアルバムは、スティーヴィー・ワンダーの音楽的才能を存分に発揮させるものであり、彼の成長と進化を示す重要な作品です。

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