淀屋

豪商 淀屋：大坂経済を支えた豪商の興亡

淀屋（よどや）は、近世に大坂（現在の中之島）で莫大な財を築き上げた豪商です。その総資産は現在の貨幣価値に換算すると約200兆円とも言われ、全国の米相場の基準となる米市を設立し、大坂が「天下の台所」と呼ばれる商都へと発展する上で、非常に大きな役割を果たしました。

淀屋の歴史

淀屋は、初代・岡本常安（おかもとじょうあん）によって創業されました。当初は材木商として事業を始めましたが、伏見城の築城や淀川の堤防改修などの土木工事にも携わり、その手腕を発揮しました。

二代目・言當（ことまさ）の時代には、事業を多角化し、青物市や雑喉場（ざこば）市を再興、さらに米市を設立しました。これらの市場を掌握することで、淀屋は大坂経済の中心的存在となっていきます。また、海外貿易にも進出し、加賀藩の米の輸送を担うなど、その事業は拡大の一途を辿りました。

しかし、その莫大な財力は幕府に警戒されることとなり、五代目・廣當（ひろまさ）の時代に闕所（財産没収）処分を受けます。表向きの理由は贅沢な生活でしたが、実際には諸大名への貸付金が膨大になりすぎたことが原因だと考えられています。

闕所後、淀屋は一旦衰退しますが、番頭であった牧田仁右衛門（まきたにえもん）が暖簾分けした店を倉吉で開き、後に大阪に戻り再興を果たします。幕末には、討幕運動に身を投じ、ほとんどの財産を朝廷に献上し、その歴史に幕を閉じました。

淀屋の事業

淀屋の事業は、米市を中心とした多角的なものでした。

米市: 全国の米相場の基準となる米市を設立し、大坂の米取引を活性化させました。
青物市、雑喉場市: 大坂三大市場を掌握し、食料品の流通を支えました。
西廻り航路: 加賀米の輸送に際し、西廻り航路を開拓し、北前船の先駆けとなりました。
金融業: 諸大名への貸付を行い、経済的な影響力を行使しました。

米市について

淀屋が設立した米市は、単なる米の取引場所ではありませんでした。米の品質や量を適正に評価し、価格を安定させることで、経済全体の安定に貢献しました。また、米の売買手形を使った取引は、世界初の先物取引の起源とも言われています。

淀屋橋と中之島

現在、大阪のビジネス街として知られる淀屋橋や中之島は、かつて淀屋が開拓した土地です。淀屋橋は、淀屋が自費で架けた橋であり、その名残を今に伝えています。また、中之島には、諸藩や米商人の蔵屋敷が立ち並び、米取引の中心地として栄えました。

前期淀屋と後期淀屋

淀屋には、岡本家による前期淀屋と、闕所後に牧田家によって再興された後期淀屋があります。前期淀屋は、豪商としての基礎を築き、大坂経済の発展に大きく貢献しました。後期淀屋は、再興後も地域経済に貢献しましたが、前期ほどの勢いはありませんでした。

淀屋の遺産

淀屋は、その興亡の歴史を通じて、大坂の経済・文化に大きな影響を与えました。淀屋橋や中之島といった地名、米市や先物取引の起源、そして豪商としての伝説は、今もなお語り継がれています。淀屋の歴史を知ることは、大阪の経済史、ひいては日本の経済史を理解する上で非常に重要な意味を持っています。

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