淋しき街角

「淋しき街角」：岡林信康、日本コロムビアでの軌跡を締めくくる一枚

1978年10月4日、日本の音楽シーンにおいて特異な存在感を放ち続けるアーティスト、岡林信康は新たなシングルを世に送り出しました。「淋しき街角」（さみしきまちかど）と題されたこの作品は、彼が当時所属していた日本コロムビアというレーベルからリリースされた最後のシングルとして、その活動の歴史に刻まれています。

アルバムからの先行リリース

このシングルは、同年すでに発売されていた岡林のアルバム『セレナーデ』からカットされた楽曲を収録しています。アルバム『セレナーデ』は、当時の彼が追求していた音楽性を反映した作品であり、「淋しき街角」はその世界観を象徴する一曲として選ばれました。シングルのジャケットには、アルバムのジャケット写真と同じ構図が用いられていますが、使用されている写真は別カットとなっており、細部までこだわりが見られます。

収録楽曲の詳細

本シングルには、A面とB面にそれぞれ異なる楽曲が収められています。いずれの楽曲も、作詞・作曲は岡林信康自身が手がけ、編曲は数多くの音楽作品に携わってきたあかのたちおが担当しています。

SIDE A: 淋しき街角
作詞・作曲：岡林信康
編曲：あかのたちお
演奏時間：3分31秒
シングルタイトルを冠するこの楽曲は、叙情的なメロディーと詞で、聴く者の心に語りかけます。あかのたちおによる編曲が、楽曲の持つ雰囲気をより一層引き立てています。

SIDE B: ミッドナイト・トレイン
作詞・作曲：岡林信康
編曲：あかのたちお
演奏時間：4分45秒
A面曲とは異なる空気を持つこの楽曲も、岡林信康の個性的な世界観が色濃く反映されています。やや長めの演奏時間の中で、じっくりと展開されるサウンドが特徴です。

後世に受け継がれる楽曲

「淋しき街角」と「ミッドナイト・トレイン」は、発表当時だけでなく、その後の岡林信康の音楽活動を振り返る上で重要な位置を占めることになります。これらの楽曲は、シングルの元となった1978年のアルバム『セレナーデ』に当然ながら収録されています。

さらに、これらの楽曲の生命力は時代を超えて受け継がれています。2013年にリリースされた岡林のデビュー45周年記念ベスト盤『岡林四十五景〜デビュー45周年記念ベスト盤』には、このシングルに収録された両曲が再び収められ、長年にわたるファンはもとより、新たなリスナーにもその存在が届けられました。

加えて、2018年に発表されたアルバム『森羅十二象』では、「ミッドナイト・トレイン」がセルフカバーという形で再録音されています。これは、発表から数十年を経てもなお、この楽曲が持つメッセージ性や魅力が失われていないことを示唆しており、岡林自身の音楽的な探求の歩みと共に変化・深化している様子をうかがい知ることができます。

時代の空気とアーティストの歩み

本シングルが発売された1978年という年は、日本の音楽シーンが多様なジャンルが混在し、移り変わりを見せていた時期です。ニューミュージックの隆盛やロックの多様化が進む中で、岡林信康のような、フォークをルーツに持ちながらも常に自身の表現を更新し続けるアーティストの動向は注目されていました。彼の音楽は、そうした時代の空気を取り込みながらも、独自のスタイルを確立していました。

「淋しき街角」は、単に一枚のシングルとしてだけでなく、岡林信康が日本コロムビアというレーベルでの活動を締めくくった節目であり、当時の彼の音楽性を凝縮した作品です。収録された二つの楽曲が、その後も様々な形で再収録され、多くの人々に聴かれ続けている事実は、これらの楽曲が持つ普遍的な魅力と、岡林信康というアーティストの音楽が時代を超えて評価されていることの証と言えるでしょう。このシングルは、1978年という特定の時期におけるアーティストの息吹を伝える貴重な記録となっています。

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