清水新地

清水新地は、江戸時代初期に京都の清水寺の門前町として栄えた地域に、茶店が軒を連ねたことが花街としての始まりとされています。この花街は、歌舞伎の演目『壇浦兜軍記』に登場する阿古屋という架空の人物にちなんで、「阿古屋茶屋」という別名でも知られていました。

明治時代に入り、新体制のもとで女紅場（じょこうば：女性のための職業訓練学校）を設置する計画が持ち上がりましたが、清水新地は時代の流れとともに衰退。1873年（明治6年）には花街としての歴史に幕を閉じました。

現在、清水新地は花街としての面影はほとんど残っておらず、多くの参拝客や観光客、修学旅行生で賑わう、かつての門前町としての姿を取り戻しています。しかし、その名前の由来となった阿古屋や、かつて花街として栄えた歴史は、今もなお語り継がれています。

清水新地の歴史を辿るには、当時の文献を紐解くことが重要です。田中緑紅の『亡くなった京の廓上』（京を語る会発行、1958年）や、田中泰彦編集の『京都遊廓見聞録』（京を語る会発行、1993年）には、清水新地に関する記述が残されており、当時の様子を知る手がかりとなります。

清水寺を訪れる際には、かつてこの地が花街として栄え、多くの人々が行き交った歴史に思いを馳せてみるのも良いでしょう。華やかな歴史は姿を変えましたが、清水新地の名は、京都の歴史の一部として今も息づいています。

もう一度検索