済陽高穂

済陽 高穂（わたよう たかほ）

日本の著名な医師であり医学者。1945年に生まれ、消化器外科医としての長い経験を持つ。現在は西台クリニックの院長として、患者の診療と食事療法を通じた健康指導に取り組んでいる。

経歴と専門分野

済陽氏は1970年に千葉大学医学部を卒業。その後、東京女子医科大学消化器病センターに入局し、外科医としての道を歩み始める。キャリアの早期である1973年には米国テキサス大学の外科教室へ留学し、消化管ホルモンに関する研究に専念した。この海外での経験は、その後の医学観に大きな影響を与えたと考えられる。

帰国後、東京女子医科大学で助教授を務めるなど教育・研究に携わった後、都立荏原病院の外科部長、さらに都立大塚病院の副院長を歴任するなど、主要な医療機関で要職を務めた。これらの豊富な臨床経験を通じて、多くの患者と向き合い、現代医療の現状を深く理解していった。そして、2008年11月からは西台クリニックの院長として、現在に至るまで医療活動を続けている。

専門は消化器外科学であり、日本外科学会指導医、日本消化器外科学会認定医など、関連分野で数多くの専門医資格や認定資格を取得している。また、日本消化吸収学会や日本胆膵外科学会など、幅広い学会活動に貢献し、評議員なども務めている。

済陽式食事療法の提唱

外科医としてがん手術に数多く携わる中で、手術だけでは根本的な治療や再発予防に限界があることを実感した済陽氏は、新たな治療アプローチの必要性を痛感するようになる。特に、がんの治療成績をさらに向上させるためには、従来の医療に加えて、患者自身の体質を改善する取り組みが重要であると考えた。

この問題意識から、氏は世界に存在する様々な食事療法に独自に目を向け、その研究を開始した。ドイツで提唱されたゲルソン療法や、それを日本向けにアレンジした星野式ゲルソン療法、さらには東洋医学的なアプローチである甲田療法など、多岐にわたる療法を深く掘り下げて学習した。また、単に病気を治すための食事だけでなく、健康を維持し長寿を享受している人々の食生活にも着目し、その共通点や特徴を分析した。

これらの広範な研究と自身の臨床経験に基づき、済陽氏は独自の食事療法理論を構築した。これが「済陽式食事療法」である。この療法は、単一の食品や方法に偏るのではなく、様々な観点から効果が期待される要素を取り入れ、バランスの取れた食事指導を行うことを特徴としている。

啓発活動と著書

済陽氏は、「済陽式食事療法」の重要性を多くの人に伝えるため、精力的な啓発活動を行っている。特に注目されるのは、その多数に上る著書である。食事療法に関する実践的なアドバイスや具体的なレシピを紹介した書籍を数多く出版しており、『今あるガンが消えていく食事』『ガンを治す食事 完全レシピ166』など、ベストセラーとなったものも少なくない。これらの著作を通じて、多くの読者に対し、食事がいかに健康、特にがん治療や予防において重要な役割を果たすかを説いている。

済陽氏の活動は、西洋医学的な治療法に加えて、患者の生活習慣、とりわけ食生活の改善が病気の回復や予防にいかに寄与するかを示唆している。現在も西台クリニック院長として、自らの提唱する食事療法を実践に生かしながら、医療の発展に貢献している。

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