渋沢栄一伝記資料

『渋沢栄一伝記資料』について

『渋沢栄一伝記資料』（しぶさわえいいちでんきしりょう）は、実業家であり社会事業家でもある渋沢栄一（1840-1931）に関する詳細な伝記を編纂するための資料集です。このプロジェクトは1955年から1965年にかけて全58巻から成る本編が刊行され、その後1966年から1971年には別巻が10巻発行されました。また、2016年からは公益財団法人渋沢栄一記念財団によるデジタル版が公開され、現代の研究者や一般の人々が容易にアクセスできるようになっています。

編纂の背景

この資料集の編纂事業を主導したのは渋沢栄一の孫、渋沢敬三です。彼は、自分の家族が伝記を書くことで私的な視点が強くなりすぎることを避けるため、外部の専門家によって伝記を作成することを目指しました。このため、栄一自身もその方針に賛同し、伝記を書くための各種資料が体系的に収集されました。

全体の構成

『渋沢栄一伝記資料』は、58巻の本編と10巻の別巻から構成されています。本編は三つの時期に分けられ、第一編は栄一の誕生から大蔵省を退職する1873年までの33年間を取り扱っています。第二編では1873年から1909年までの36年間に彼が実業界で果たした指導と社会事業への取り組みが綴られ、第三編は1909年から1931年までの22年間の社会事業と実業界の支援について述べられています。各編は、出来事を年代順に整然と記録した編年体で記載されており、事業ごとに細分化されている部分もあります。

別巻には渋沢栄一の日記や書簡、講演、談話、遺墨、写真など、多角的な視点から彼の人生に迫る資料が収められています。

記載形式

本編は、一つ一つの出来事について概要を記載した「綱文」を設け、その後に基となる資料を時系列で引用する形を取っています。これにより、各事業に関わる詳細な情報を時系列で追うことができ、研究者にとって貴重なリソースとなっています。全体では約7,500の綱文があり、引用資料の数は35,000に達します。これは、歴史的資料集の編集における先駆けとも言えるでしょう。

検索の利便性

本編の第58巻には「事業別年譜」「総目次」「50音順の索引」が収録されており、利用者が求める情報を迅速に見つけられるよう工夫されています。特に「事業別年譜」では過去の活動を通しで見ることができ、各業務の関連性を把握しやすくなっています。また、時代を超えての関連事業の交差を確認することもできます。

編纂の経緯

伝記資料の収集は、渋沢栄一の存命中から始まっています。1887年には、栄一が自身の経歴を語りそれを記録したものがまとめられ、「雨夜譚」として後に出版されました。その後も彼の死去（1931年）まで様々な資料の収集や編集が行われ、複数の中断を経て、続きが関係者によって形にされていきました。

デジタル化の進展

2004年から渋沢栄一記念財団が始めたデジタル化事業は、研究支援の面で大きな進展を示しています。テキスト、目次、画像のデータ化という段階を経て、2016年には本編57巻がオンラインで公開されました。このことにより、利用者は自由なキーワード検索が可能になり、その利便性は一層高まりました。また、関連する別巻のデジタル化も順次進められています。

まとめ

『渋沢栄一伝記資料』は単なる伝記に留まらず、近代日本の歴史研究においても重要な資料を提供していると言えます。この資料集は未来の研究や一般の利用者にとって、非常に貴重な資源となり続けています。

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