渡辺三郎 (バンジョー奏者)

渡辺三郎の生涯と業績

渡辺三郎（わたなべ さぶろう）、1949年12月3日生まれ、2019年11月22日没。彼は日本のブルーグラス音楽に多大な貢献をしたミュージシャンであり、バンジョー奏者としても名を馳せた。音楽グループ「ブルーグラス45」の創設メンバーの一人であり、アメリカのブルーグラスシーンにも影響を受けつつ、日本におけるブルーグラスの普及に力を注いだ。

音楽との出会い

渡辺は兵庫県宝塚市で生まれ、1960年代初頭に初めてブルーグラス音楽を知った。アメリカの伝説的なバンジョー奏者アール・スクラッグスに触れ、彼の影響を受けてバンジョーを手に取るようになった。1966年には神戸市のコーヒーハウス「ロストシティー」で音楽活動を始め、兄の敏雄と共に仲間たちと「ブルーグラス45」を結成する。このカフェは、アメリカのカフェ文化を模したブルーグラスの楽園とも呼ばれる場所で、彼らは演奏を重ねながら技術を磨いていった。

成長と活動

バンドはたくさんのライブ演奏を行い、観客にはアメリカ兵も多く含まれていた。当時の兵士たちが古いアパラチアの曲を聴いて感動する場面もあったという。また、1968年にアール・スクラッグスのバンドが日本に来た際、渡辺はその演奏に衝撃を受け、自身の音楽人生が変わるきっかけとなった。1972年には、ドキュメンタリー『Bluegrass Country Soul』に出演し、スクラッグスと共に演奏したことでも知られている。

彼らは1970年に日本万国博覧会でも演奏し、1971年には初めてアメリカをツアーした日本のブルーグラスバンドとなった。彼らの活動は多くの参加者に支持され、1972年には再度アメリカツアーを行った。彼らの音楽は、レベル・レコードから3枚のLPとしてリリースされたが、同年に解散した。

インディペンデントな活動

解散後、渡辺はプロデューサー、プロモーターとして日本におけるブルーグラスの発展に従事した。1972年、兄の敏雄と共にレッド・クレイ・レコードを設立し、ブルーグラスやオールドタイムの音楽をリリースした。特に彼らは、トニー・ライスのアルバム『Guitar』をプロデュースしたことでも知られている。その後、音楽の配給会社B.O.Mを立ち上げ、日本のブルーグラス音楽を広める役割も果たした。

1983年には、ブルーグラス専門雑誌『ムーン・シャイナー』を創刊し、1991年からは編集も手がけた。この雑誌は日本国内で唯一のブルーグラス専門誌であり、渡辺の活動がブルーグラスの普及に寄与していることを示している。さらに、1998年には国際ブルーグラス音楽協会から「今年の印刷媒体の人」に選ばれるなど、その業績が評価された。

フェスティバルの立ち上げ

渡辺は1972年から、宝塚市の波豆八幡神社で「宝塚ブルーグラス・フェスティバル」を開催し、ディレクターを務めた。彼が死去するまでの約40年にわたってこのフェスティバルは続き、2022年には50回目を迎えた。このイベントは世界で最も古いブルーグラスの祭典の一つとして知られ、アメリカのフェスティバルに次いで重要な役割を果たしている。

最期と継承

渡辺は2019年11月22日に亡くなったが、その足跡や功績は今なお多くの人々に影響を与え続けている。彼の音楽に対する情熱と努力は、日本のブルーグラスシーンを豊かにし、多くの後進たちに影響を与えている。

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