渡辺真弓 (建築史学者)

渡辺真弓氏は、1948年生まれの日本の建築史学者で、東京造形大学の名誉教授です。専門は西洋建築史と都市史で、特にルネサンス期の建築に深い造詣を持っています。

東京都出身の渡辺氏は、東京大学工学部建築学科を卒業後、同大学院修士課程を修了しました。1976年から1977年には、イタリア政府給費留学生としてパドヴァ大学に留学し、ヨーロッパの建築に対する知見を深めました。帰国後、1979年に東京造形大学の専任講師となり、その後、助教授、教授を経て2014年に退任。名誉教授の称号を受けました。

2008年には、「16世紀ヴェネツィア共和国の都市と建築 アンドレア・パラーディオおよび同時代の建築家たちの都市ヴェネツィアとの関わりに関する研究」で、東京大学から工学博士号を授与されました。この研究は、彼女が長年取り組んできたヴェネツィア建築に関する研究の集大成であり、アンドレア・パラーディオをはじめとする建築家たちが都市ヴェネツィアに与えた影響を詳細に分析したものです。

著書には、建築と歴史の関わりを考察した『石は語る 建築は語る』や、パラーディオの建築を巡る旅を綴った『ルネサンスの黄昏 パラーディオ紀行』があります。また、ヴェネツィアの都市と建築に関する研究書である『パラーディオの時代のヴェネツィア』や、ゲーテの旅に沿ってイタリアの都市を巡る『イタリア建築紀行　ゲーテと旅する7つの都市』などがあります。

共著としては、西洋建築史の入門書として広く利用されている『図説 西洋建築史』があり、翻訳書には、都市の歴史を描いた『歴史の都の物語　世界史をいろどった21の都市』や、パラーディオの建築思想を読み解く『完璧な家　パラーディオのヴィラをめぐる旅』などがあります。これらの著作を通じて、渡辺氏は西洋建築の歴史と魅力を広く伝え、多くの読者に影響を与えています。

渡辺真弓氏の研究は、単に建築様式を解説するだけでなく、建築が置かれた歴史的・文化的背景を深く掘り下げ、都市と建築の密接な関係を明らかにするものです。彼女の業績は、日本の建築史研究において重要な位置を占めており、その幅広い知識と深い洞察力は、多くの研究者や学生にとって貴重な指針となっています。また、教育者としても、多くの学生を育成し、日本の建築史研究の発展に大きく貢献しました。

渡辺真弓氏の学術的貢献は、その緻密な研究とわかりやすい解説によって、建築史の専門家だけでなく、一般の読者にも建築の魅力を伝えている点にあります。彼女の著作は、建築を理解する上での良質な資料として、今後も多くの人々に読み継がれていくでしょう。

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