渡邉興亞

渡邉 興亞

渡邉 興亞（わたなべ おきつぐ）氏は、1939年に生まれた日本の雪氷学者であり、極地科学の分野で顕著な業績を残しました。長年にわたり、南極・北極の自然環境の研究に携わり、特に雪や氷に関する専門知識を深めました。

その学術的なキャリアは、1958年に大阪府立大手前高等学校を卒業し、北海道大学に進学したことから始まりました。北海道大学理学部で学び、さらに大学院へと進み、雪氷学の研究に没頭しました。大学院修了後、1967年には名古屋大学理学部の助手に着任し、研究者としての道を歩み始めました。

名古屋大学では、その後水圏科学研究所へと移り、助教授として教育と研究に従事しました。この間、1978年には同大学から理学博士の学位を取得しています。1975年には国立防災科学技術センター雪害実験研究所で研究室長を務めるなど、研究対象を広げました。

1985年、渡邉氏は国立極地研究所の研究系教授に就任し、極地研究の最前線へと活動の場を移しました。ここでは、南極・北極の氷床や積雪に関する詳細な研究を進め、雪氷学の専門知識を活かして地球環境変動の解明に貢献しました。

渡邉氏のキャリアにおける特筆すべき功績の一つに、極地観測におけるリーダーシップが挙げられます。1993年には、日本の南極地域観測隊の第35次隊隊長という重要な役割を担いました。厳しい自然環境の中で、観測隊を率い、科学的なミッションの遂行に尽力しました。その後、国立極地研究所北極圏環境研究センター教授なども務め、極地研究の多角的な発展に貢献しました。

組織運営においてもその手腕を発揮し、2000年には国立極地研究所の所長に就任しました。所長として、日本の極地研究を牽引し、国内外の研究機関との連携強化や、次世代の研究者育成にも力を注ぎました。研究所所長退任後は、情報・システム研究機構理事、総合研究大学院大学監事、信州大学特任教授などを歴任し、研究分野全体の発展に貢献しました。

長年の功績が認められ、2005年には国立極地研究所名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授の称号を授与されました。また、2009年度には日本気象学会堀内賞、平成25年度には科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞（理解増進部門）を受賞するなど、その業績は高く評価されています。2019年には日本地球惑星科学連合フェローに選ばれ、2021年には北大山の会会長を務めるなど、多方面で活躍を続けています。

著書としては、『南極大陸 : その自然を読み解く』（日本放送出版協会、2003年）などがあり、一般読者にも極地の魅力と重要性を伝えています。渡邉氏の活躍は、日本の雪氷学および極地科学研究の歴史において、極めて重要な足跡を残しています。

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