温禰古丹島

温禰古丹島：千島列島に浮かぶ双子のカルデラ湖とアイヌの歴史

千島列島北部に位置する温禰古丹島（おんねこたんとう）は、ロシア名オネコタン島、英語名Onekotanとして知られています。東西に長く伸びたその形状は、南北に存在する2つの壮大なカルデラ湖によって特徴付けられます。この島は、豊かな自然と複雑な歴史、そして現在も続く領有権問題を併せ持つ、魅力と謎に満ちた場所です。

圧巻のカルデラ湖と火山

温禰古丹島の最大の特徴は、南北に位置する2つのカルデラ湖です。北側のカルデラ湖は蓬莱湖（ほうらいこ）と呼ばれ、その中心には根茂山（ねもやま、標高1019m）がそびえ立ちます。「ネモ」はアイヌ語の「攀じ登る」を意味する言葉に由来し、この山の火山活動の活発さを示唆しています。実際に、蓬莱湖は新たな噴火活動により、埋め立てられつつあると言われています。

一方、南側のカルデラ湖は幽仙湖（ゆうせんこ）と呼ばれ、その中心には黒石山（くろいしやま、標高1324m）が聳え立っています。黒石山は、富士山のような美しい成層火山であり、その雄大な姿は千島列島随一の絶景と評されています。幽仙湖カルデラは過去に巨大な噴火を起こした痕跡があり、その規模は噴出量が30～36立方キロメートルに及ぶと言われています。

アイヌ文化と歴史の痕跡

温禰古丹島は、古くから千島アイヌの人々が生活の場としていたと考えられています。島の名の由来も、アイヌ語の「オンネ・コタン（大きな村）」に由来しており、アイヌの人々の生活圏として重要な場所であったことが分かります。根茂山麓にはかつてイルシカブシ村が存在し、その名はアイヌ語で「怒り・噴火する」を意味します。これは、根茂山の火山活動と、島がかつて「努舎子古丹（ぬさしこたん）」と呼ばれていたことと関連していると考えられています。「努舎子古丹」はアイヌ語で「幣場がある村」を意味し、北側の岬には海神を祀る重要な場所があったことを示しています。

明治時代初期には、外国船の遭難により一時的に居住した外国人もいたと伝えられています。また、戦前にはキツネの養殖も行われていたようです。島には、かつてのアイヌの生活や歴史を感じさせる遺跡が点在しており、静かにその歴史を語りかけています。

領有権問題と現状

1855年の日露通好条約により一時ロシア領となり、1875年の樺太・千島交換条約により日本領となりましたが、1884年には千島アイヌが色丹島に移住させられ無人島となります。その後、第二次世界大戦後にはソ連（現ロシア）の実効支配下に置かれ、現在もロシアの国境警備隊が駐留しています。日本政府は、国際法上は帰属未定であると主張しており、領有権問題は現在も解決を見ないままとなっています。

温禰古丹島へのアクセスとその他

温禰古丹島へのアクセスは容易ではなく、一般観光客の立ち入りは制限されています。しかし、その手つかずの自然と歴史、そして複雑な領土問題が、この島をさらに神秘的な存在にしています。

この島に関する情報は限られていますが、残された資料や記録から、かつてのアイヌ文化や歴史、そして自然環境の一端を垣間見ることができます。今後、より多くの研究や調査によって、温禰古丹島に隠された謎が解き明かされることを期待したいです。

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