湯ノ宮の座論梅

湯ノ宮の座論梅

宮崎県児湯郡新富町大字新田に位置する湯ノ宮の座論梅（ゆのみやのざろんばい）は、1935年（昭和10年）12月24日に国の天然記念物に指定された、大変歴史ある梅の木です。

特徴と形態

この座論梅の最大の特徴は、その独特な樹形にあります。一本の原木から伸びた枝が地面に触れると、そこから根を出して新しい株となり、さらにそこから伸びた枝が再び地について株を増やすという繁殖形態をとります。これは「臥龍梅（がりゅうばい）」と呼ばれる珍しい生育の仕方であり、龍が大地を這うような姿に見立てられます。伝えられるところによれば、元々は一本の株であったものが、このようにして株数を増やし続け、現在では約80株にもなる大きな群生を形成しています。樹齢は600年とも言われ、長い年月を経てこの地の歴史を見守ってきました。

由来にまつわる伝承

湯ノ宮の座論梅には、いくつかの興味深い伝承が残されています。

まず、その起源については、神武天皇が東征の際にこの地で休息され、使っていた梅の枝を地面に挿したところ、それが根付いて成長したものが現在の座論梅になったという伝説があります。

また、「座論梅」という名の由来についても二説あります。

1. 一つは、「ザロミ」という梅の品種名から来ているという説です。
2. もう一つは、江戸時代に佐土原藩と高鍋藩（明倫堂）の間で梅林の所有権を巡る争いが起こり、両藩の家臣たちがこの地で座って論議を交わしたことに因むという説です。

これらの伝承は、座論梅が古くから地域の人々にとって特別な存在であったことを物語っています。

梅の名所としての位置づけ

湯ノ宮の座論梅は、宮崎県内における梅の名所として古くから知られています。特に、宮崎市高岡町にある月知梅（げっちばい）と並び称され、県を代表する梅林として親しまれてきました。さらに、鹿児島県の藤川天神にある臥龍梅（がりゅうばい）を加えて、「三州三梅」の一つとしても数えられており、南九州における著名な梅の一つとしてその名が知られています。

新富町と座論梅

座論梅は、所在地である新富町にとっても重要なシンボルとなっています。新富町は町の木として「ウメ」を選定しており、座論梅はその町のシンボルとしての役割も果たしています。町では座論梅を核とした町おこしに取り組んでおり、開花時期には「座論梅梅まつり」を開催して多くの観光客が訪れます。

地域の施設名にもその名が冠されており、近隣のゴルフ場は「宮崎座論梅ゴルフクラブ」と名乗っています。また、同町に所在する航空自衛隊新田原基地に駐屯する第305飛行隊の部隊マークが梅であることから、部隊のワッペンなどに「座論梅」の文字が刺繍されるなど、地域社会と深く結びついた存在となっています。

長い歴史と独特の形態、そして地域との深いつながりを持つ湯ノ宮の座論梅は、天然記念物としての価値だけでなく、文化財としても貴重な存在です。

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