湾岸ルピー

湾岸ルピーとは

湾岸ルピーは、1959年から1970年頃までの間、ペルシャ湾沿岸地域で使用されていた通貨です。この通貨は、インド政府がインド・ルピーの国外流通を制限するために発行したもので、特にクウェート、バーレーン、カタール、トルーシャル海岸地域（現在のアラブ首長国連邦）、マスカット・オマーンなどの地域で広く使われました。しかし、各国の経済的な独立が進むにつれて、それぞれの独自通貨へと移行していきました。

歴史的背景

1950年代後半、インドでは金密輸が深刻化し、外貨準備高が減少していました。この問題を解決するため、インド政府は1959年5月に湾岸ルピーを発行し、インド・ルピーの国外での流通を制限しました。湾岸ルピーは、これらの地域でのみ使用されることを目的としていました。

しかし、1966年6月6日にインド政府が英ポンドに対してペッグしていたインド・ルピーを切り下げたことが、湾岸ルピーの運命を大きく変えました。この切り下げの影響を避けるため、カタールやその他の国々は独自通貨の導入を急ぎました。

クウェートは1961年にクウェート・ディナールを、バーレーンは1965年にバーレーン・ディナールを導入し、アブダビもバーレーン・ディナールを採用しました。カタールとドバイは共同でカタール・ドバイ・リヤル（後のカタール・リヤル）を導入しました。オマーンは1970年まで湾岸ルピーを使用し続けましたが、その後、オマーン・リアルを導入しました。

固定為替レート

湾岸ルピーは、基本的に英ポンドに対して固定レートで取引されていました。そのレートは1ポンド=13 1/3ルピーでした。この固定レートは、地域経済の安定に寄与しましたが、インド・ルピーの切り下げを機に、各国の独自通貨導入を加速させる要因となりました。

紙幣と硬貨

湾岸ルピーには、1、5、10、100ルピーの紙幣が存在しました。これらの紙幣は、通常のインド・ルピーとデザインが似ていましたが、登録番号の左に「Z」が印刷されていたことで区別されました。紙幣はインド準備銀行（Reserve Bank of India）によって発行されました。

硬貨としては、1、2、5、10、25、50パイサ硬貨がありました。1ルピーは100パイサに相当しました。

関連項目

ルピー

外部リンク

カタール中央銀行ウェブサイト：湾岸ルピー紹介（英語） - ウェイバックマシン（2009年4月10日アーカイブ分）

まとめ

湾岸ルピーは、1950年代後半から1970年代初頭にかけてペルシャ湾岸地域で流通した通貨であり、インド・ルピーからの独立と各国の経済的な発展を背景に、その役割を終えました。湾岸ルピーの歴史は、地域の通貨制度の変遷を知る上で重要な一例と言えるでしょう。

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