満艦飾

満艦飾：祝祭を彩る艦船の伝統

軍艦が祝祭日や記念日などに、船体に多数の旗を掲げて飾ることを「満艦飾（まんかんしょく）」と言います。英語ではfull dress ship。艦首からマスト（帆柱）を通って艦尾まで、色鮮やかな旗が連なり、祝祭ムードを華やかに演出します。古くは万国旗が使われることもありましたが、国旗の順序が国際関係を示す可能性があるため、現在では主に信号旗が用いられています。軍艦以外では「満船飾（まんせんしょく）」と呼ばれます。

海上自衛隊における満艦飾

日本の海上自衛隊では、停泊中の自衛艦や支援船が、祝日（建国記念の日、天皇誕生日、憲法記念日、海の日、文化の日）、自衛隊記念日、観艦式実施日などに満艦飾を行います。実施時間は朝8時から日没まで。各マスト最上部には自衛艦旗が掲揚され、船体には信号旗が、メインマストを基準に定められた順序で連揚されます。信号旗の配置順序は厳格に定められており、艦首から艦尾まで、そして艦尾から艦首までそれぞれ異なる配列となります。

外国の港湾内や外国艦船の近傍に停泊する際は、相手国の祝日などに満艦飾が行われる場合、それに倣って自衛艦も満艦飾を行います。この際は、メインマストに相手国の国旗を掲揚します。開港祭への参加や広報活動、国際親善などでも実施されます。

演習中や修理中、あるいは海上幕僚長が満艦飾が不適切と判断した場合は、各マスト最上部に自衛艦旗を掲揚する「艦飾」を行います。悪天候などにより満艦飾が困難な場合、所在先任指揮官の判断で艦飾に変更、または省略されることもあります。

電灯艦飾

夜間に行われる電飾を「電灯艦飾」と言います。満艦飾と同様の目的で、国家の大典や観艦式など、海上幕僚長が指定する日に実施されます。艦首から各マスト、艦尾を結ぶ線と船体を約1メートル間隔で白色電球で装飾します。

アメリカ海軍の例

在日米軍の艦船は、アメリカ独立記念日、クリスマス、そして天皇誕生日にも満艦飾と電灯艦飾を実施します。信号旗の配置順序は、日本とは異なる独自の配列となっています。

俗語としての「満艦飾」

「満艦飾」は、洗濯物が物干し竿にびっしりと干されている様子を表現する俗語としても使われてきました。特に1960年代頃までは、梅雨の晴れ間のニュースなどで耳にする機会がありましたが、近年は高齢者の間で主に用いられるようになり、死語になりつつあります。

他にも、女性が派手な服装をしている様子や、デコトラのように装飾を施したトラックなどを表現する際にも使われることがあります。また、コンピューター関連では、オプションを最大限に設定することを「クリスマスツリー」と表現することがありますが、それに相当する言葉として用いられることもあります。

まとめ

満艦飾は、単なる装飾ではなく、祝祭への敬意と国家間の友好を示す重要な儀式です。その歴史と現代における実施方法、そして多様な解釈を知ることで、海上の伝統文化をより深く理解できるでしょう。

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