滅びのモノクローム

戦時中の闇を暴く、16ミリフィルムの謎

三浦明博のミステリー小説『滅びのモノクローム』（かつては『亡兆のモノクローム』というタイトルで発表された）は、第48回江戸川乱歩賞を受賞した話題作です。2002年の書籍刊行後、2004年にはフジテレビの金曜エンタテイメント枠でテレビドラマ化もされ、多くの視聴者を魅了しました。

物語の中心となるのは、広告代理店に勤める主人公・日下です。彼は骨董市で偶然手に入れたフライフィッシング用のリールに、思わぬおまけが付いてきます。それは、古い16ミリフィルム。戦時中に封印された、ある過去の記録を写したフィルムだったのです。

CM制作のアイデアとしてこのフィルムを活用しようとした日下でしたが、その映像は、彼の想像をはるかに超えた、衝撃的な事実を物語っていました。

日下がフィルムを入手した骨董市の店主、月森花は謎めいた魅力を持つ女性です。彼女との出会いをきっかけに、日下は次第に戦時中の出来事、そして隠蔽された真実へと近づいていきます。

物語は、日下を中心に、様々な登場人物たちの思惑と行動が複雑に絡み合いながら展開していきます。

骨董市で出会った月森花、日下の同僚や上司、そして、過去の出来事に深く関わった人物たち。それぞれの視点から語られる物語は、読者（視聴者）に想像を掻き立てる、スリリングな展開を見せます。

単なるミステリー小説にとどまらず、戦争という重いテーマを背景に、人間の業や心の闇を深くえぐり出す本作は、読者に強い印象を残すでしょう。

登場人物たちは、それぞれに複雑な過去や秘密を抱え、それぞれの思惑が絡み合って物語は進んでいきます。日下は、最初は偶然手にしたフィルムから始まった謎解きに、次第に深く関わっていくことになります。

物語の舞台となるのは、現代社会と、戦争の影が未だ色濃く残る過去の世界です。この対比によって、物語に深みが増し、読者は現代社会と過去の繋がり、そして歴史の重さを改めて考えさせられます。

小説版『滅びのモノクローム』は講談社より刊行され、単行本（2002年8月1日発売 ISBN 4062114585）、文庫本（2005年8月12日発売 ISBN 4062751682）と、現在でも入手可能です。テレビドラマ版では、国仲涼子、葛山信吾、橋爪功など実力派俳優が多数出演し、原作の世界観を見事に表現しました。

あなたは、この16ミリフィルムに映された真実を、最後まで見抜くことができるでしょうか？

戦時中の暗い影と、現代社会の光と影が複雑に絡み合う、息もつかせぬ展開は、ミステリーファンのみならず、多くの人を惹きつける魅力に満ちた作品となっています。

この作品を通して、過去の歴史と現代社会のつながりを改めて考え、戦争の悲劇を二度と繰り返さないという強いメッセージを受け取ることができるでしょう。

謎解き、サスペンス、そして人間の心の深淵を描いた『滅びのモノクローム』は、忘れがたい読書体験となること間違いありません。

もう一度検索