滝川事件

滝川事件について

滝川事件（たきがわじけん）は、1933年に京都帝国大学で発生した思想弾圧事件です。この事件は、後に「京大事件」としても知られるようになりました。この事件は、大学での思想の自由が脅かされたことを象徴するものとして、歴史上重要な意味を持っています。

事件の経緯

滝川事件は、京都帝国大学の法学部に所属していた瀧川幸辰教授が、1932年に行った講演をきっかけに始まりました。彼が発表した講演の内容は、政府や保守派から「無政府主義的」と批判され、文部省と司法省の関心を呼びました。しかし、当初はその件は問題視されなかったものの、1933年に発生した「司法官赤化事件」が状況を一変させました。この事件を契機に、特に右翼からの圧力が強まり、「赤化教授」の追放が議論されるようになりました。

その結果、4月には瀧川の著書が発売禁止となり、さらに文相からの要求を受けて彼の罷免が求められました。これに対し、京大法学部の教授たちは一致団結して抗議し、辞表を提出することとなりますが、大学当局は教授会の主張を支持しませんでした。最終的には、瀧川は休職処分となり、これに同調した教官たちのうち多くが辞職を余儀なくされました。

学内外の抗議運動

この事件は、京大法学部の学生たちを喚起し、全員が退学届けを提出するなど大規模な抗議運動を起こしました。さらに、他大学の学生たちもこれに続く形で「大学自由擁護連盟」という団体を結成し、京大の自由を支援する活動を展開しました。多くの文化人やメディアも京大イベントの支援に乗り出し、文部省への批判を強めました。

しかし、学内の抗議運動は次第に衰退しました。夏期休暇を迎えたことも影響し、自由擁護連盟は解散となりますが、この活動は多くの反ファシズム的な雑誌や運動を生むきっかけにもなりました。

事件の影響とその後

滝川事件の結果、多くの教官が独立した道を選び、立命館大学に移籍することになりました。事件後、瀧川はこの大学で教壇に立つようになります。このことは、立命館の発展に寄与し、京大以外の大学法学部の成長につながりました。しかし、京大に残る教官の中には、感情的なしこりも残り、その後の大学運営に影響を与えました。

また、この事件は戦後の京大法学部における再建にも大きな影響を及ぼしました。戦後GHQの方針の下で瀧川は京大に復帰するものの、他の辞職した教官たちは戻らず、これにより深い亀裂が生じました。

大きな影響を受けたのは、自由な学問の環境でした。以前は自由主義思想に対する弾圧の象徴であった本事件は、大学自治や学問の自由が国家権力の影響を受けやすいことを示す重要な転機とされています。

事件を題材にした作品

滝川事件は、多くの文献や文化作品にも影響を与えました。例えば、黒沢明監督の映画『わが青春に悔なし』では、この事件をテーマにしたキャラクターが描かれています。また、漫画作品『ジパング』においても、事件に関連する設定が見られます。

以上のように、滝川事件は思想の自由、学問の独立に対する弾圧を象徴する歴史的な出来事であり、今もなお多くの人々に影響を与えています。

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