漁業補助金に関する協定

漁業補助金に関する協定について

漁業補助金協定（Agreement on Fisheries Subsidies）は、WTO（世界貿易機関）の国際的な取り組みの一環として、持続可能な漁業を実現するための重要なルールです。この協定は、2001年から続けられたドーハ・ラウンド交渉の中で取り上げられ、2022年6月17日に開催された第12回WTO閣僚会議で正式に合意され、WTO協定に追加されることとなりました。2025年9月15日には発効する予定です。

協定の背景と日本における承認手続き

漁業補助金協定は、海面漁業における補助金を対象とし、養殖業や内水面漁業に対する補助金は含まれていません。この協定の目指すところは、持続可能な漁業の確立と、違法・無報告・無規制漁業（IUU漁業）の抑制です。

日本においては、この改正議定書に対する国会の承認を受けるために、2023年3月27日に閣議決定が行われ、その後衆議院と参議院で可決されました。最終的に、7月5日の官報に公布され、令和5年条約第3号として正式に認可されました。国内の法律改正は外務省の見解により必要ないとされています。

協定の主要内容

この協定は、WTO協定の附属書1Aに位置付けられており、以下のような重要な規定を含んでいます：

1. 対象とする補助金（第1条）
漁業補助金協定では、WTO補助金協定に基づく、海面漁業に対する補助金のみが対象となります。養殖業や内水面漁業に対しては適用されません。

2. IUU漁業に対する規律（第3条）
違法・無報告・無規制漁業に対する補助金は、全て禁止されています。

3. 乱獲資源に対する規律（第4条）
乱獲状態にある資源に関連する漁業に対する補助金は原則として禁止されますが、特定の条件を満たす場合（資源管理措置などを通じて資源の回復を促進する場合や補助金自体が資源回復を助ける場合）は、例外として許可されます。

4. 無管理公海に対する規律（第5条）
沿岸国の管理下にない公海における漁業に対する補助金は禁止されています。

5. 通報及び透明性
WTO加盟国は、漁業補助金の対象となる漁業の種類、漁獲量、資源の状態、保存管理措置などを定期的にWTOに通報し、透明性を確保することが求められます。

6. 継続的な交渉
協定は法的文書として成立していますが、今後も交渉が継続される予定であり、より包括的な規定の策定が目指されています。発効後4年以内に新たな包括的規律が採択されない場合、協定は失効する可能性があります。

まとめ

漁業補助金協定は、WTOの枠組みの中で持続可能な漁業を促進するための重要な一歩であり、今後の国際的な漁業管理において大きな影響を持つことが期待されています。この協定によって、漁業資源の保護と再生のための努力が強化され、各国が協力して持続可能な漁業を推進する基盤が築かれることになるでしょう。

もう一度検索