澤村宗十郎

澤村 宗十郎

澤村宗十郎（さわむら そうじゅうろう）は、江戸時代より現代まで続く歌舞伎役者の重要な名跡の一つです。その屋号は紀伊國屋、定められた紋は「丸にいの字」、そして替え紋としては「花有り足有りの笹竜胆」が伝えられています。歴代の澤村宗十郎を襲名した役者たちの魂は、東京都文京区にある田島山十一ヶ寺の一院、受用院に静かに祀られています。

この由緒ある名跡の歴史をたどると、まず、後に初代澤村長十郎（1675年〜1734年没）となる人物が、一時的に「宗十郎」の名を名乗った時期がありました。しかし彼はすぐに本来の「長十郎」に戻ったため、これは代々宗十郎には数えられていません。

正統な初代澤村宗十郎（1685年〜1756年没）は、この初代長十郎の門弟でした。彼は役者としての道を歩む中で、染山喜十郎、澤村善五郎、澤村惣十郎といった名跡を名乗り、やがて初代宗十郎を襲名しました。その芸歴の晩年には、三代目澤村長十郎、さらには初代助高屋高助という、澤村家にとって極めて重要な他の名跡も継承しています。

初代宗十郎の門弟の中には、澤村春五郎という役者（？年〜1749年没）がいました。初代が三代目長十郎を襲名した後、春五郎は宗十郎の名を一時的に名乗りました。しかし、その名乗りは短く、翌年には「惣十郎」と改名し、ほどなくして亡くなりました。彼の俳名である「遥波」（ようは）にちなんで「遥波宗十郎」と通称されることもありますが、彼もまた歴代の宗十郎には数えられていません。

二代目澤村宗十郎（1713年〜1770年没）は、初代宗十郎の養子として家を継ぎました。彼は当初、初代富澤門太郎の門弟となり、富澤長之助、竹中歌川、瀧中歌川、歌川四郎五郎といった名を名乗った後に、二代目宗十郎を襲名しました。

三代目澤村宗十郎（1753年〜1801年没）は、二代目宗十郎の次男として生まれました。初代澤村田之助の名で舞台に立った後、父の後を継ぎ三代目宗十郎となりました。俳号に由来し、俗に「大訥子（おおとっし）」とも呼ばれました。

四代目澤村宗十郎（1784年〜1813年没）は、三代目宗十郎の長男です。父から役者の道を学び、初代澤村源之助として経験を積んだ後、四代目宗十郎を襲名しましたが、比較的短い生涯でした。

五代目澤村宗十郎（1802年〜1853年没）は、四代目宗十郎の門弟でした。初代澤村源平、二代目澤村源之助、初代澤村訥升といった名を名乗り、実力と経験を重ねた後に五代目宗十郎を襲名しました。彼もまた、後に五代目澤村長十郎、そして三代目助高屋高助と、宗十郎以外の重要な名跡を継承した人物です。

贈六代目澤村宗十郎（1838年〜1886年没）は、五代目宗十郎の長男にあたります。彼は二代目澤村源平、二代目澤村訥升、四代目助高屋高助といった名を名乗り、宗十郎襲名が目前に迫っていましたが、名古屋での舞台出演中に病に倒れ、帰らぬ人となりました。そのため、その死後に「六代目宗十郎」の名が追贈されました。

七代目澤村宗十郎（1875年〜1949年没）は、贈六代目の養子として澤村家を継ぎました。四代目澤村源平、三代目澤村訥升として舞台で活躍し、大正時代に七代目宗十郎を襲名、戦中戦後にかけて宗十郎として重きをなしました。

八代目澤村宗十郎（1908年〜1975年没）は、七代目宗十郎の三男です。五代目澤村源平、四代目澤村訥升を名乗り、一時期市川松莚と改名しましたが、再び四代目澤村訥升に戻り、戦後に八代目宗十郎を襲名しました。

九代目澤村宗十郎（1933年〜2001年没）は、八代目宗十郎の長男にあたります。六代目澤村源平、五代目澤村訥升として着実に芸を磨き、父の後を継いで九代目宗十郎を襲名。平成期まで澤村宗十郎の名を継承し、その歴史に名を刻みました。

このように、澤村宗十郎の名跡は、血縁だけでなく養子や門弟によっても受け継がれ、多くの役者がこの名を背負い、歌舞伎の伝統と発展に貢献してきました。その系譜は、江戸から現代に至るまで、脈々と続いています。

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