澤村宗十郎 (7代目)

七代目澤村宗十郎（1875年12月30日 - 1949年3月2日）は、明治から昭和にかけて活躍した歌舞伎役者です。本名を澤村福蔵といい、屋号は紀伊國屋、俳名に高賀を持ちます。東京市（現在の東京都）出身で、一説には東本願寺法主の隠し子とも伝えられています。四代目助高屋高助の養子となりました。

生い立ちと初期の舞台
1875年（明治8年）12月30日、東京市京橋区新富町に生まれた宗十郎は、1881年（明治14年）11月に久松座で『凱和田合戦』の実千代役として、四代目澤村源平の名で初舞台を踏みました。その後、義兄である澤村訥子と共に大阪へ渡り、1892年（明治25年）には十一代目片岡仁左衛門の引き立てを受け、三代目澤村訥升を襲名しました。さらに東京に戻り、小芝居の真砂座などで修行を重ねました。

七代目澤村宗十郎襲名と帝劇時代
1908年（明治41年）9月、歌舞伎座で『高野山』の苅萱道心役を演じ、七代目澤村宗十郎を襲名しました。1911年（明治44年）には帝国劇場（帝劇）の専属となり、1930年（昭和5年）の帝劇松竹借り受けまで所属しました。女形と立役の両方をこなし、江戸和事ともいうべき古風な芸風と独特の台詞回しが特徴的で、観客の評価は大きく分かれました。

晩年と再評価
帝劇が松竹に買収された後、宗十郎は近代歌舞伎の流れから外れて不遇をかこっていました。しかし、戦後になって三島由紀夫などの文化人によってその芸風が再評価され、「宗十郎歌舞伎」として再び注目を集めるようになりました。その矢先、地方巡業先の姫路で『仮名手本忠臣蔵』の勘平役を演じている最中に倒れ、舞台の揚幕の中で「財布。財布。」と、六段目の勘平が使う小道具の財布のことを言いながら息を引き取るという壮絶な最期を遂げました。

人物像と芸風
宗十郎は鷹揚な性格で、舞台で被るはずの鬼女の面を忘れてしまい、それらしい顔をしてごまかしたという逸話も残っています。当り役には、『神霊矢口渡』のお舟、『梅の由兵衛』の由兵衛、『助六』の白酒売や鈴木主水、『高野山』の苅萱道心、『明烏』の時次郎、『伽羅先代萩』の頼兼、『蘭蝶』などがありました。宗十郎は、代々の家の芸に自らの当り役を加え、「高賀十種」を定めました。

実子には、五代目助高屋高助、五代目澤村田之助、八代目澤村宗十郎がいます。墓碑は田島山十一ヶ寺の受用院と多磨霊園にあります。

関連事項
澤村宗十郎: 歌舞伎役者の一門名。
知立劇場: かつて愛知県知立市にあった劇場。1926年（昭和元年）のこけら落としで『阿古屋の琴責め』を上演しました。

七代目澤村宗十郎は、その独特な芸風と劇的な生涯を通じて、歌舞伎史にその名を刻みました。彼の芸は、今日の歌舞伎にも大きな影響を与え続けています。

もう一度検索