激流 (柴田よしき)

小説『激流』概要

『激流』（げきりゅう）は、柴田よしきによる日本の小説で、2003年から2005年にかけて連載された後、加筆・訂正が行われて初版が2005年10月31日に徳間書店から出版されました。物語は、一度失われた青春の記憶と、それにまつわる人々の人生の交錯を描いています。

あらすじ

物語の舞台は、学級崩壊寸前の京都にあるK中学校の3年A組。学年の中でも2班は未だにまとまりを保っていましたが、修学旅行中に起こる一つの事件が彼らの運命を大きく変えることになります。7名の生徒が乗るバスの中で、一人の少女・小野寺冬葉が突如として姿を消します。最初は自由行動を楽しんでいる少女が迷子になったのだろうと考えられていましたが、警察の捜索が続くも、冬葉は見つからず、彼女の失踪は謎に包まれたままになってしまいます。

その後、冬葉をいじめていたという疑惑が浮上し、同班の生徒たちは大きな苦悩に見舞われることになります。時間が経つにつれ、彼女を探す者もいなくなり、冬葉の姿は次第に忘れ去られていきました。しかし、20年という歳月が流れ、当時の生徒たちはそれぞれ異なる道を歩んでいました。

再会と新たな運命

約20年後、当時のメンバーは35歳となり、それぞれの人生で思わぬ逆境に直面しています。音楽家として活動していた秋芳美弥は、薬物問題に悩まされながらも新作映画に出演するチャンスを得て、再起を狙っています。御堂原貴子は平凡な主婦となりながら、家庭の経済問題から不道徳な手段に手を染めています。その間、井上圭子は夫との離婚調停で悩みつつも、出版社での仕事に励んでいます。他のメンバーである鯖島豊や長門悠樹もそれぞれの問題を抱えています。

ふとしたきっかけから、彼女たちの元に「私を覚えていますか？ 冬葉」という謎のメールが届きます。冬葉は生存しているのか、そしてなぜ今頃になって連絡してきたのか？それぞれが思い悩む中、彼女たちの運命の歯車は再び動き出します。

登場人物

主要な登場人物は、井上圭子、秋芳美弥、河野貴子、東萩耕司、鯖島豊、長門悠樹の6人で構成されており、それぞれが冬葉の失踪に対する把握や影響を抱えています。圭子は文芸部の班長として、生徒会役員も務めた真面目な少女。一方、美弥は冷静で音楽の才能を持ちながらも、過去の壮絶な経験に引きずられています。貴子は美貌で愛されながらも、生活のために選んだ不正な手段を抱えています。各人の背景が物語の中で複雑にからまり、感情的な深みを生み出しています。

結末とテーマ

物語は、再会を果たすことで各々の心に溜まっていた重圧を解消し、失ったもの、特に青春の儚さや思春期の苦悩と向き合う契機を提供します。『激流』は人々の関係性や運命の流れを描き、失踪した少女を通じた深い人間ドラマを展開する作品です。その結末は読者に多くの考察を投げかけ、心に残る印象を与えることでしょう。

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