濃縮還元

濃縮還元とは

濃縮還元とは、飲料、特に果汁飲料の製造において用いられる一般的な製法の一つです。この製法は、果汁を搾った後、その水分を様々な方法で除去し、濃縮された状態にします。その後、製品化する段階で再び水分を加えて、元の濃度に戻すというプロセスを経ます。

この濃縮還元の対義語としては、「ストレート」製法があります。ストレート果汁は、果実を搾ったそのままの状態で製品化されるため、濃縮還元果汁とは異なる特性を持っています。

濃縮還元の概要

濃縮還元は、主にオレンジジュースなどの果汁飲料に適用されます。果汁を濃縮する主な目的は、輸送コストを大幅に削減することにあります。水分を減らすことで、同じ量の飲料を運ぶのに必要な容積を小さくできるため、海上輸送ではジュース専用タンカー、陸上輸送ではタンクローリーやタンクコンテナが利用されます。

濃縮された果汁は、食品加工工場で水を加えて攪拌されることで元の濃度に戻されます。また、清涼飲料水の原料として、製造過程で加えられることもあります。この際、使用される水は飲料水として安全であることが必須であり、多くの場合、工場の安全基準を満たした地下水や、取水場から処理された水道水が用いられます。

さらに、ファーストフード店やファミリーレストランなどでは、濃縮された果汁を薄めるためのドリンクディスペンサーが利用されています。これにより、注文に応じて一定の濃度に薄められ、飲み物として提供されます。

1900年代末頃から、濃縮・還元過程を経ない「ストレート果汁」を謳う製品も市場に登場しています。濃縮還元の場合、香りが損なわれることがあるため、香料を加えている製品も少なくありません。一方、ストレート果汁は、より自然な風味を持つとされています。栄養価に関しては、製造過程で加熱殺菌が行われるため、熱に弱い栄養素に限っては、両者に大きな差がない可能性もあります。

濃縮の方法

飲料の濃縮には、いくつかの方法があります。

煮沸濃縮: 高温で加熱し、水分を蒸発させて濃縮します。殺菌効果も期待できますが、風味が損なわれやすいため、近年ではあまり用いられません。
真空濃縮: フリーズドライと同様の原理で、低温で減圧し、真空状態で水分を蒸発させます。
凍結濃縮: 含まれる水分を凍結させ、氷の結晶を取り除くことで濃縮します。高濃度の濃縮が可能ですが、エネルギー消費が大きいという側面もあります。
膜濃縮（膜分離）: 特殊な膜（逆浸透膜など）を用いて、ろ過によって濃縮します。
* 超音波霧化分離: 超音波を液体に照射して霧を発生させ、霧状になりやすい物質となりにくい物質に分離することで濃縮します。加熱を伴わないため、熱に弱い食品の品質を損ないにくいという特徴があります。

濃縮の利点

濃縮された果汁は、高い濃度（浸透圧）を持つため、抗菌効果が期待できます。また、容積が小さくなることで容器も小さくでき、空気に触れる面積も狭くなるため、長期保存時の酸化による栄養素の破壊を軽減することもできます。

飲料をそのまま運ぶよりも、水分を減らして容積を小さくした方が、同じコストでより大量の量を運搬できます。また、保存性が向上するため、運搬コストを低減できます。特に産地が限られる果物の場合、生のままの果実や搾ったままの果汁では保存性が悪く、広範囲に製品を提供することが困難です。しかし、濃縮果汁の輸送性があれば、一国の産品を世界各地に供給することが可能です。例えば、オレンジジュースはブラジルの重要な輸出農業資源となっています。

濃縮還元は、食品の輸送と保存の効率化に大きく貢献する製法と言えるでしょう。その一方で、風味や栄養価の面ではストレート製法に劣る可能性があることも理解しておく必要があります。

もう一度検索