火力 (軍事)

軍事における火力：戦闘能力の根幹

軍事における火力は、戦闘における主要な能力の一つであり、敵に対して損害を与える力、特に遠距離から攻撃する能力を指します。この概念は、狭義には銃や大砲、ミサイルなどの火薬を用いた兵器による破壊力を意味しますが、広義には敵との距離を保ちながら有効な攻撃能力を行使する戦闘部隊の総合的な能力を指します。

狭義の火力

狭義の火力は、火器やミサイルなどの兵器が持つ攻撃力や破壊力を指します。例えば、艦艇に搭載された火砲の数に着目することで、敵対する艦隊の火力を比較することができます。しかし、陸上戦力における火力の測定は、使用される武器の種類や割合が多様であるため、より複雑です。

火力がもたらす基本的な効果は、射殺（fire kill） と 制圧（suppression） の二つです。つまり、火力は敵に物理的な損害を与えるだけでなく、心理的に戦闘行動を妨害する力も持ちます。この火力の優劣を示す概念が 火力優位（fire superiority） です。火力優位は、弾薬と火器の量、射撃の正確さ、連携によって発揮される、ある勢力の火力の優位性を示します。火力優位を判断するためには、自軍と敵軍の火力を比較する必要があります。

アメリカ軍の野戦教範105-5によれば、火力の評価基準は以下の6つです。

1. 火力の持続率：火力を維持できる時間や能力
2. 効果範囲：火力が有効な範囲
3. 破砕地域：火力が破壊できる範囲
4. 目標の暴露と密度：攻撃対象の露呈度や密度
5. 他の兵器の効率との比較：他の兵器と比較した火力の効率
6. 直接射撃と間接射撃の区分：直接的な射撃と間接的な射撃の区別

これらの火力の要素は、1960年代から1970年代の研究で 兵器効率指標（WEIs） と 兵器単位値（WUVs） を組み合わせた WEI-WUV という体系にまとめられました。また、近年では戦闘結果から火力を測定する方法も考案されており、兵器の理論的な致死性指標（TLI）を用いて研究が進められています。

広義の火力

広義の火力は、単に兵器の破壊力だけでなく、距離を置いて敵に損害を与える可能性のあるあらゆる能力を指します。この概念は、敵戦力を滅ぼすか、戦闘継続能力を奪うという点で、現代戦における主要な原則の一つです。長い間、火力は近接戦闘ではなく、距離を用いた攻撃的な力を意味していました。

火力は、敵が人数で優位に立っていても、精密な攻撃によって打ち倒したり、戦闘意欲を喪失させたりするのに用いられます。また、射程距離によって敵戦力を外側に押しとどめる効果もあります。結果として、より大きな火力を投射できる側が、そうでない側を降伏させることができます。火力は、銃砲の発射速度といった単一の概念ではなく、軍事力における総合的な攻撃能力を表す言葉として用いられます。

まとめ

火力は、軍事作戦における重要な要素であり、その概念は狭義と広義に分けられます。狭義の火力は兵器の破壊力に焦点を当てますが、広義の火力は敵に損害を与える総合的な能力を指します。現代戦では、火力の優位性が戦闘結果を大きく左右するため、火力の評価基準や概念を理解することは非常に重要です。

参考文献

Dupuy, T. N. 1985. Numbers, predictions, and war. Rev. ed. Fairfax, Va.: HERO books.
Dupuy, T. N. 1987. Understanding war: History and theory of combat. New York: Paragon House.
Hughes, B. P. 1975. Firepower: Weapons effectiveness on the battlefield, 1630-1850. New York: Scribner's.
U.S. Department of the Army. 1973. Field Manual 105-5: Maneuver control. Washington, D.C.: Government Printing Office.

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