火星の地形一覧

太陽系の第四惑星である火星には、その表面に数多くの特徴的な地形が存在し、それぞれに名前が付けられています。この一覧では、火星上で公式に命名された地形とその名称の由来について解説します。

かつて、まだ望遠鏡観測が中心だった時代には、イタリアの天文学者ジョヴァンニ・スキアパレッリやフランスのウジェーヌ・アントニアディといった観測者たちが、火星表面に見える濃淡の模様（アルベド地形）を基に地図を作成しました。スキアパレッリはこれらの模様を地球上の海や陸に見立て、古代ギリシャやローマの神話、あるいは古典的な地名からラテン語やギリシャ語を用いて名称を付けました。例えば、暗い部分は「海」（mare）、明るい部分は「大陸」（terra）などと名付けられました。

20世紀後半以降、火星探査機による詳細な観測が可能になると、これらのアルベド地形が実際の地形（クレーター、峡谷、山など）と必ずしも一致しないことが明らかになりました。古い火星地図におけるアルベド地形の分類自体は過去のものとなりましたが、そこで用いられた古典的な名称の多くは、現代の火星の地理学的名称として引き継がれています。

地形カテゴリーと名称の由来

火星の地形は、その形状や性質によって様々なカテゴリーに分類されており、それぞれに特有の命名規則があります。

古典的アルベド地形名称に由来する地形: 火星の地形名称の大部分は、前述の歴史的なアルベド地形の古典的な名称に由来しています。これには、連鎖クレーター、谷、高原、舌状の高原、山脈や山、長い褶曲尾根、丘、卓状台地、迷路、砂丘、地すべり地形、溶融物質が流れている地域、カオス地形（不規則に崩壊したような地形）、不規則な凹地、パルス（「沼」を意味する古い名称）などが含まれます。これらの地形の名称は、過去の観測者がアルベド地形に与えた名前がそのまま、あるいは形を変えて現代の地形名として採用されています。

アルベド地形名称や運河名称に由来する地溝帯: 地溝帯の名称も、多くはアルベド地形やかつて想像された「運河」の古典的な名称から取られています。ただし、「マンガラ地溝帯」のように例外も存在します。

円錐丘: 円錐丘の名称は、アルベド地形の古典名称に加え、「運河」と呼ばれた線状の特徴に由来するものもあります。

地球の地名等に由来する峡谷: 火星の峡谷の名称は、その大半が地球上の実在する河川の名前や、各言語で「火星」を表す言葉に由来しています。これは、峡谷がかつて水が流れた痕跡と考えられたことに起因すると考えられます。

スキアパレッリの地図に由来する平原: 平原の名称は、主にジョヴァンニ・スキアパレッリが作成した火星地図に記された名称に基づいています。

架空の湖に由来する湖: 火星の湖と呼ばれる地形の名称は、その大半が実在する湖ではなく、想像上の、あるいは文学作品などに登場する架空の湖の名前から取られています。

ギリシアの古代地名に由来する大陸: 火星の比較的大きな明るい領域である大陸の名称は、主に古代ギリシアの地名から名付けられています。

荒野: 荒野と呼ばれる地形も火星には存在しますが、その名称が具体的に何に由来するかは、提示された情報からは明確ではありません。

これらの命名規則は、国際天文学連合（IAU）によって定められており、火星表面の詳細な探査が進むにつれて、新たな地形が発見され、適切な名称が付与され続けています。古典的な名称が現代科学でも利用されていることは、火星観測の長い歴史を今に伝えています。

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