火星の太陽面通過 (海王星)

海王星から見た火星の太陽面通過

この珍しい天文現象は、太陽系の最外縁に位置する巨大惑星、海王星から観測した際に、内側の惑星である火星がちょうど太陽と海王星の間に位置し、火星の円盤が太陽の手前を横切るように見える現象を指します。これは、地球から見た金星や水星の太陽面通過と同様のメカニズムで起こりますが、観測地点が海王星であるため、非常に特殊な条件でのみ発生します。

発生頻度と周期性

海王星における火星の太陽面通過は、極めて長い時間スケールで見ると、比較的頻繁に起こる現象と言えます。紀元前125000年から西暦125000年までの25万年間という途方もない期間に、合計で10702回発生することが計算されています。

個別の通過は、おおよそ80年というサイクルで訪れます。ただし、その発生パターンは一定ではなく、長期的にわずかに変動しています。現在の周期的なパターンとしては、約80年の間に、およそ11ヶ月の間隔を置いて連続して発生するペアの太陽面通過が3回続き、その後、次のペアが発生するまでの間に単独の太陽面通過が1回だけ起こるという繰り返しが見られます。

この周期パターンも永続的なものではありません。時間の経過とともに徐々にずれが生じ、別のパターンへと移行していきます。例えば、西暦4083年2月4日に単独の太陽面通過が観測された後、しばらくの間は、全ての太陽面通過がおよそ11ヶ月間隔のペアとして発生する期間が続きます。具体的には、西暦4328年7月5日から西暦4332年4月22日にかけて3回連続して11ヶ月周期のペアが発生した後、次に単独の太陽面通過が起こるのは西暦5234年3月2日まで待つことになります。このように、約80年という基本的な周期の中に、数百年から千年単位でその出現パターンが変化するという複雑な様相を呈しています。

直近の通過

直近で海王星における火星の太陽面通過が発生したのは、1944年8月3日のことでした。次にこの現象が見られるのは、比較的近い将来である2026年5月5日と予測されています。これらの日付は、太陽面通過における火星が太陽面上の中心線に最も近づく、いわゆる最大食の日付であり、すべて協定世界時（UTC）で示されています。

極めて稀な同時太陽面通過

さらに稀少な現象として、海王星から見た火星の太陽面通過が、他の惑星や月の太陽面通過と同時に発生する場合があります。

例えば、火星と水星が同時に太陽面を通過するという出来事は、単独の火星の太陽面通過よりもはるかに稀です。計算によると、前回この二つの惑星が同時に海王星から見て太陽面を横切ったのは、遠い過去、紀元前22826年1月16日という日付に遡ります。

さらに驚くべきことに、火星、地球、そして地球の衛星である月の三者が同時に海王星から見て太陽面を通過するという、極めて特殊な三重の太陽面通過も理論上は発生し得ます。この現象は想像を絶するほど稀であり、既知の計算では、前回発生したのは紀元前124600年1月1日という、これまた途方もなく古い過去でした。そして、次にこの奇跡的な光景が見られるのは、遠い未来、西暦21845年10月7日と予測されています。これらの同時通過の発生間隔は、単独の通過周期とは比較にならないほど長いことから、その希少性が際立ちます。

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