火星ベースキャンプ

火星ベースキャンプ (Mars Base Camp: MBC)

火星ベースキャンプ（MBC）は、アメリカの航空宇宙企業ロッキード・マーティンが、NASAからの委託を受けて開発を進めている、火星探査のための実験室オービターの構想です。この計画は、将来の有人火星探査ミッションを支援するための深宇宙輸送機としての役割を果たすことを目指しており、月ゲートウェイ宇宙ステーションを含む、より大規模な宇宙開発アーキテクチャの一部として位置づけられています。

概要

MBCは、最大1,000日間の火星探査ミッションをサポートする能力を持つことを目指しています。その主な目的は、火星の軌道上や衛星（ダイモスとフォボス）の表面で、リアルタイムの遠隔操作科学活動を行い、将来の火星表面ミッションに向けた人間の準備を整えることです。この構想は、既存の技術や開発中の技術を活用し、オリオンMPCVなどの実績ある宇宙船を基盤としています。

2016年5月にロッキード・マーティンによって発表されたこのコンセプトは、火星の軌道に宇宙飛行士を送り込み、そこで活動を行うための宇宙船設計です。2017年9月には、火星ベースキャンプと接続する再利用可能な乗員シャトルであるMADV（火星上昇降下ビークル）の概念を含む、計画のアップデートが行われました。

運用とタイムライン

MBCは、NASAの「月から火星へ」という宇宙探査計画をサポートする技術ロードマップの一部として提案されています。月ゲートウェイを経由し、深宇宙輸送機として機能することが想定されています。

主要なシステムとモジュール

MBCは、以下の主要なシステムとモジュールで構成されています。

オリオンMPCV: 軌道上の宇宙船の指揮統制の中心であり、ナビゲーション、通信、および長期ミッションのための生命維持機能を備えています。
ソーラーアレイ: 宇宙船の運用と太陽電気推進エンジンに必要な電力を生成します。
ラジエーター: 電子機器や乗組員の居住区から発生する熱を調整し、適切な温度を維持します。
極低温推進段階: 月から火星への軌道遷移に必要な推力を提供します。また、ダイモスやフォボスへの遠征のために、インパルスバーンスラスターによる操縦能力を備えています。これらのミッションでは、極低温推進ステージがオリオン、サービスモジュール、およびエクスカーションモジュールを衛星表面まで輸送します。
実験室: 火星表面でのドローンやローバーの遠隔操作に必要な科学機器、サンプル分析ツール、ワークステーションを備えています。
生息地: 乗組員のための追加の居住スペース、消耗品の保管場所、放射線防護機能、運動器具を提供します。
火星上昇/下降ビークル（MADV）: 火星の衛星表面で科学的な活動を行う乗組員が使用する、複数のエクスカーションビークルを搭載するエクスカーションモジュールです。プロトタイプは、まず月面での運用が提案されています（ロッキード・マーティン・ルナランダー）。

その他の情報

火星ベースキャンプは、2018年4月時点でまだ研究段階の概念であり、NASAは連邦政府の年間予算サイクルで正式なミッション提案を行っていません。しかし、このプロジェクトは、将来の有人火星探査ミッションにおける重要なステップとなる可能性を秘めており、今後の進展が期待されます。

関連情報

火星軌道ランデブー：火星探査ミッションにおける軌道上でのドッキングや rendezvous 技術に関する概念。

外部リンク

ロッキード・マーティンの火星ベースキャンプのホームページ（原文参照）
火星ベースキャンプ。 2028年までに火星に人間を送るためのアーキテクチャ - 2016年10月の概要、25ページ（原文参照）
SpacePolicyOnline.com：「ロッキードマーティンが今日「火星ベースキャンプ」を周回する2028年を提案する」（原文参照）
ニューズウィーク：「ロッキードマーティンが火星ベースキャンプを計画」（原文参照）
* International Business Times：「ロッキードマーティンが2028年までに火星を周回する基地を建設して人間をレッドプラネットに送る」（原文参照）

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