炎立つ (小説)

概要

『炎立つ』（ほむらたつ）は高橋克彦が著した長編歴史小説であり、平安時代の東北地方を背景に、蝦夷と朝廷の対立を描いている。作品は1992年から1994年にかけて、日本放送出版協会から全5巻が刊行され、次いで1995年には講談社文庫版が登場した。この小説は、NHKの1993年の大河ドラマ『炎立つ』の原作として新たに執筆されたが、高橋の執筆の遅れによって、ドラマの制作は三部構成となった。第一部と第二部では小説の内容が大部分反映されていたものの、第三部ではストーリーが大きく改変されている。

物語の流れ

物語は、前九年の役や後三年の役、そして奥州藤原氏の興亡を中心に構成され、特に蝦夷側の視点から物語が展開する。平安時代における複雑な権力闘争や文化背景を描写しつつ、時に歴史的事実を基にしつつも独自の解釈が加えられているのが特徴だ。なお、『炎立つ』はその後上梓された『火怨』や『天を衝く』と合わせて「陸奥三部作」と呼ばれることとなる。

各巻の内容

• - 巻の壱 北の埋み火（1992年12月刊行）: 前九年の役に至るまでの安倍氏と朝廷の動向が描かれ、物語の背景が構築される。
• - 巻の弐 燃える北天（1993年2月刊行）: 前九年の役の実際の戦闘やその背景が詳述され、物語は激化する。
• - 巻の参 空への炎（1993年5月刊行）: 前九年の役の続きが描かれ、緊迫感が増す中での人間ドラマが展開される。
• - 巻の四 冥き稲妻（1993年8月刊行）: 後三年の役、蓄積される対立とその影響が強調される。
• - 巻の伍 光彩楽土（1994年5月刊行）: 奥州藤原氏の栄光とその滅亡の物語が完結し、さまざまなキャラクターの運命が描かれる。

主要登場人物

本作には多数のキャラクターが登場し、物語を彩る。特に注目すべきキャラクターには、陸奥国の豪族藤原経清、安倍頼時、鎌倉の源頼朝、そして奥州藤原氏の藤原清衡らがいる。彼らの間で繰り広げられる権力争いや人間模様が、作品に深みを与えている。

舞台劇と公演

また、2014年にはこの作品を基にした舞台がBunkamuraのシアターコクーンで上演され、その後全国各地で公演が行われた。多くの人々に新たな形で物語が届けられ、高橋克彦の歴史的な解釈を広める機会となった。

まとめ

『炎立つ』は、日本の歴史を背景にした重厚な物語を描く作品であり、平安時代の社会構造や人々の心理を深く掘り下げることで、時代を越えた普遍性を持つ作品となっている。

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