炭坑節

炭坑節（たんこうぶし）

炭坑節は、福岡県に起源を持つ民謡であり、現在の田川市がその発祥とされています。この歌はもともと炭鉱労働者の間で歌われていたもので、明治時代に生まれた『伊田場打選炭唄』が原曲とされています。「月が出た出た月が出た、ヨイヨイ」というフレーズで広く知られており、初めは盆踊りの歌ではありませんでしたが、戦後に全国的な人気を博し、ほかの盆口説を置き換える形で盆踊りの歌として歌われるようになりました。これにはもともと春の歌だったという説もあります。

唄のバリエーション

炭坑節にはさまざまな派生唄があります。代表的なものには以下のような種類があります：

• - ゴットン節（チョンコ節）：掘り手や運搬係が唱った歌で、歌詞には春の歌、悪口、自嘲、恋愛など多様な内容が含まれています。この節回しは全国に広まったチョンコ節から派生したものです。

• - 石刀唄：発破を担当する作業員が、ダイナマイトを使う際に岩盤に穴を開けながら唄った歌です。

• - 南蛮唄：坑内の水を汲み出す際に、大きなロクロを押し回しながら歌われました。その後、花柳界でも広まって三味線伴奏が付けられるようになりました。山口県宇部炭鉱でも異なる南蛮音頭が存在しました。

• - 選炭唄：女性作業員が石炭から屑を取り除く際に歌ったもので、炭鉱によって節回しが異なります。また、選炭の方法によっても歌い方が変わります。

• - 座敷唄：田川郡の小学校教師小野芳香が1910年に編曲した選炭唄で、田川や小倉の花柳界でも広く歌われました。 1932年には「炭坑唄」として初めてレコード化されましたが、伴奏は異なるスタイルでした。

流行の経緯

戦前に座敷唄のレコードが発売されたことで、特に東京での流行が始まり、それに伴い炭坑節のリズムも変化しました。1948年には著名なアーティストたちが炭坑節を録音し、いずれもヒットを記録しました。この頃、炭鉱業界が盛況であったため、歌の知名度がさらに高まりました。特に昭和30年代には、炭労幹部が東京のバーで歌ったエピソードもあり、炭坑節がもたらす盛り上がりが伺えます。

また、君栄や小梅などが歌い、いずれもヒットしました。流行の中でいくつかの誤記が生じ、炭坑節の起源が大牟田市の三井三池炭鉱にあるとの誤解や、伊田町と後藤寺町の元祖論争がありましたが、最終的には伊田町が元祖とされることになりました。

炭坑節は、全国の盆踊りでのスタンダードの一つとなり、鈴木正夫の歌唱によって多くの地域で親しまれています。筑豊では三橋美智也のバージョンが人気です。

さらに、埼玉西武ライオンズは元の本拠地が福岡であったため、試合の際に炭坑節を演奏することでも知られています。

現在の展開

炭坑節の発祥に関しては地域説がいくつも存在しています。一つには浪花節から派生した「奈良丸くずし」の詞が影響を与えたとも言われ、情歌や春歌に変わっていった経緯があります。

福岡県田川市では、防災行政無線を通じて毎日炭坑節が流されており、地域の名物となっています。また、多くの音楽作品やゲームにおいても頻繁に扱われており、今なおその人気は衰えていません。

炭坑節はその根底に、働く人々の息遣いや地域の文化が色濃く反映されており、現代においても軽快なリズムとメロディが人々を楽しませています。

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