烏坎事件

烏坎事件とは

烏坎事件は、2011年に中華人民共和国広東省の陸豊市にある烏坎村で起きた一連の騒乱であり、村民の自己決定権を巡る争いが原因です。この事件は、村民委員会による不透明な土地取引に始まり、最終的には村民が直接選挙を行う権利を獲得する経緯へと展開しました。

事件の背景

中国の改革開放後、人民公社が廃止されると土地は村民委員会が管理することになりました。しかし、土地の処分に関しては、全成人村民が参加する村民会議で承認を得る必要があります。烏坎村では、村民委員会が会議の承認なしに土地を処分し、その結果、得られた代金の配分に問題が生じました。

村民に払われたのは、1人当たり500元というわずかな補償金であり、代金の多くは村民委員会の役員が不正に取得したと考えられています。このような状況に不満を持った村民たちは、2009年から2011年にかけて、陸豊市や政府陳情局に何度も陳情を行い、抗議活動を行いました。

抗議活動のエスカレーション

2011年9月21日、約3000人の村民がデモを行い、開発業者や市政府に対して請願しました。その後、武装警察が村に進駐し、集会の解散を求めたことから衝突が発生しました。この事件により負傷者や逮捕者が出る事態となり、村民と当局の対立が激化しました。

その後、陸豊市政府との話し合いが行われ、一時的に事態は収束しましたが、調査班の信頼性が疑問視され、結果的に村民たちはさらなる抗議を続けることになりました。11月には市庁舎前での座り込みが行われ、12月には調査結果の発表が行われましたが、その内容には村民たちを失望させる部分も多く含まれていました。

衝突の激化

12月10日、村民は調査班の責任者の親戚が経営する牧場を襲撃し、再度衝突が激化しました。その翌日、拘束された村民代表が急死するとの報道がされると、村民たちの抗議はさらに強まりました。警察は村への水道や電気供給を停止し、村は孤立状態に陥りましたが、村民はSNSを利用して自らの声を広めました。

村民たちは、仲間の解放や調査班責任者の親戚の死に対する引き渡しを求め、600人以上の青年によるデモを計画しました。最終的に、汕尾市政府が村民の要求を認め、デモを中止するよう呼びかけたことで、事態は約3か月に及ぶ混乱の末に収束しました。2012年には村民代表による初めての選挙が行われ、村民委員会が選任されることとなりました。

「烏坎モデル」の評価

事件の解決策は「烏坎モデル」として評価されていますが、これがすべての抗議行動に当てはまる保証はありません。それでも、この事件は社会衝突の解決に新たな手本を示し、多くの注目を集めました。実際、烏坎村の成功を見て類似の土地問題に立ち向かう村が続出しましたが、彼らは厳しい弾圧に直面しました。

烏坎村のその後

2012年9月には抗議デモの周年を記念するため村民たちが再び集まりました。一方で、他の村も烏坎村の影響を受けて立ち上がっていましたが、厳しい弾圧に直面し、逮捕者が出る事態も発生しています。

2016年には再び武装警察が大規模に投入され、村民との衝突が発生しました。警察はデモ隊を弾圧し、村を孤立させる施策を講じる中、村民たちは必死で抵抗を続けている状況です。

このように、烏坎事件は中国における村民の権利意識の高まりを象徴する出来事であり、当時の政治状況や社会問題を浮き彫りにしています。

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