無伴奏チェロソナタ (コダーイ)

ゾルターン・コダーイ作曲の「無伴奏チェロ・ソナタ 作品8」は、1915年に作曲され、1918年に初演された無伴奏チェロ曲です。この作品は、チェリストのイェネー・ケルペイに献呈されており、楽譜にはフランス語で「A Eugène de Kerpely」と献辞が記されています。

このソナタは、全体を通して調号が明記されていませんが、ロ短調を主調としています。構成は、古典的なソナタ形式に沿った3つの楽章から成り立っています。

第1楽章：アレグロ・マエストーソ・マ・アパッシオナート
第2楽章：アダージョ（コン・グランデスプレッシオーネ）
* 第3楽章：アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ

この作品の大きな特徴として、スコルダトゥーラ（変則調弦）が挙げられます。楽譜の指示によれば、G線とC線を半音下げるように指示されており、通常のC-G-d-aという調弦に対し、H¹-Ges-d-aという調弦で使用されます。この特殊な調弦法を用いることで、楽曲に独特な響きと表現力を与えています。

また、この曲は、左手のピッツィカートや重音奏法、急速なトレモロなど、高度な演奏技術を必要とする難曲としても知られています。しかし、これらの技巧は単なる技術の誇示ではなく、チェロという楽器の可能性を最大限に引き出すためのものです。擦弦楽器としてのチェロだけでなく、撥弦楽器や打弦楽器としての側面も取り入れることで、華麗で斬新な効果と、オーケストラのような豊かな響きを生み出しています。

コダーイは、この作品において、チェロをハープ、バグパイプ、太鼓、ターロガトー、ツィンバロンといった様々な民族楽器を模倣する楽器として捉えています。そして、ハンガリーの民族舞踊ヴェルブンコシュの様式を取り入れることで、民族的な色彩と独特のリズム感を楽曲に与えています。

このソナタは、多くの著名なチェリストによって演奏、録音されており、中でもヤーノシュ・シュタルケルの演奏は特に高く評価されています。彼がピーター・バルトークの制作によって録音した2度目の録音は、歴史的名盤として広く知られています。その他にも、ピエール・フルニエ、ミクローシュ・ペレーニ、ユーリ・トゥロフスキー、マリア・クリーゲル、ヨーヨー・マ、長谷川陽子、藤森亮一、ルイス・クラレ、ジャン＝ギアン・ケラス、クサヴィエ・フィリップス、タマーシュ・ヴァルガなど、多くの名手がこの作品に挑戦しています。

ヨーヨー・マによる演奏は、日本ではサントリーローヤルのCM曲として使用され、広く親しまれています。また、長谷川陽子の録音は、「文化庁芸術作品賞」と「日本プロ音楽録音賞」を受賞しています。

コダーイの無伴奏チェロ・ソナタは、チェロという楽器の可能性を追求し、高度な演奏技術と豊かな音楽性によって、聴衆を魅了する傑作です。

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