無実はさいなむ

無実はさいなむ

『無実はさいなむ』（むじつはさいなむ）は、1957年に登場したアガサ・クリスティによる長編推理小説であり、読者を引き込む緻密なストーリーが魅力です。物語は、冤罪で逮捕後に亡くなった男性の無実を証明するため、地理学者アーサー・キャルガリが調査を始めるところから始まります。彼は被害者の遺族と対峙する中で、思わぬ反応に直面します。

あらすじ

物語の舞台はサニー・ポイント。ここで、裕福な女性レイチェル・アージルが無惨に殺害された事件から、2年が経過しています。アーサー・キャルガリはアージル家に足を踏み入れ、彼女に養子として迎えられたジャッコが疑われた殺人の真相を追い求めます。裁判の結果、ジャッコは有罪となり投獄され、最終的に獄中で命を落としました。

キャルガリは、ジャッコのアリバイを証明する意志を示し、彼が犯行時にヒッチハイクをしていたことを証言できると主張します。しかし、アージル家の人々はこの明かしに無関心であり、物語は思わぬ方向へと展開していきます。

捜査が進む中、ジャッコの家族に目が向けられ、父のレオと兄マイケル、妹メアリ、秘書のグウェンダなど、次々と疑いがかかります。キャルガリはジャッコと面会後、思いがけずトラック事故に遭い、一時的に記憶を失います。しかし、イギリスに戻った際、彼はジャッコの写真を見て記憶を取り戻し、調査を再開します。

医師のマクマスターに話を聞くと、彼はジャッコが有罪になったことに驚いていたものの、彼の人間性に疑惑を持っていました。ジャッコは臆病で、他人に殺させることに抵抗がなかったというのです。キャルガリは、ジャッコの元妻モーリンとの会話を通じ、彼の性格にさらに迫ります。

やがて、アージル家の養子であるティナがサニー・ポイントを訪れることになります。しかし彼女は、フィリップというメアリの夫の死体を発見し、その場を目撃されてしまいます。この出来事を経て、彼女は命の危機にさらされます。

病院で目を覚ましたティナは、フィリップのカップが空だったことを証言。この情報から、キャルガリは犯人はカーステンであると推理します。カーステンはジャッコに言葉巧みに取り込み、レイチェルを狙った殺人を企てたのです。

しかし、ジャッコの隠された結婚が発覚したことにより、カーステンは彼の裏切りに気づくに至ります。結局、彼女は逮捕を恐れて逃げ出し、事態は混乱を招きます。物語は、家族の悲しみや秘めた思いに揺れる登場人物たちの姿を描くことで、人間ドラマとしての深みも感じさせます。

登場人物

アーサー・キャルガリ: 地理学者、冤罪事件の真相を追う。
レイチェル・アージル: 殺害された資産家。
ジャッコ: アージル家の養子で、容疑者。
メアリ、マイケル、テイナ、ヘスター: アージル家のその他の養子。
フィリップ・デュラント: メアリの夫。
カーステン: アージル家の家政婦。
* マクマスター: 引退した医師。

このようにして、アガサ・クリスティの『無実はさいなむ』は、緊迫した心理描写と複雑な人物関係によって、最後まで目が離せない作品となっています。

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