無宿 (映画)

無宿（やどなし）

1974年10月4日に公開された映画『無宿』は、勝プロダクションが制作し、東宝が配給した日本映画です。この作品は、昭和49年度文化庁芸術祭に参加したことでも知られています。特筆すべきは、高倉健と勝新太郎が唯一共演した映画であり、その貴重な組み合わせが作品の魅力を引き立てています。

概要

『無宿』は、アラン・ドロンが主演し、ロベール・アンリコが監督を務めたフランス映画『冒険者たち』を基にしたストーリーです。この映画は、二人の男と一人の女性が主な登場人物として描かれるロードムービーとなっており、友情や人間関係のドラマが展開されます。監督は斉藤耕一で、製作には勝新太郎、西岡弘善、真田正典が関与しました。脚本は中島丈博と蘇武道男によって書かれ、撮影は坂本典隆が担当しました。

製作経緯

『無宿』の製作は、1973年11月に予定されていた東映製作の映画『海軍横須賀刑務所』に高倉健が出演しなかったことに始まります。その結果、勝新太郎が東映に初めて出演し、高倉の役を引き受けました。これを受けての御礼として、高倉が他社での主演に挑むことになりました。

映画のタイトルは当初『仁義の掟』でしたが、1974年8月に『無宿』に変更されました。この変更には、勝自身が監督の斉藤を松竹から引き抜くきっかけがあったようです。監督の斉藤は、勝が強く影響を受けた『津軽じょんがら節』が評価されていました。

脚本の背景

映画の脚本は、『冒険者たち』を参考にしていたとされていますが、製作途中の文献には、日本版『スケアクロウ』の脚本も存在しています。この『スケアクロウ』はバディムービーとして高評価ですが、日本での興行成績は奮わなかったため、幹部たちは『無宿』も同様の結果になると予測していました。

撮影と公開

『無宿』の撮影は、1974年8月19日に開始される予定でした。しかし当初、主演俳優の高倉健、勝新太郎、梶芽衣子、安藤昇などの主要キャスト全員が東京での製作記者会見に参加できず、会見は行われませんでした。これは、売れっ子俳優たちのスケジュール調整が難航したためです。

興行の結果

映画の公開に先立ち、東映内部での経営方針を巡る対立がありました。この状況を受けて、岡田茂東映社長は『無宿』の公開時に、菅原文太主演の『実録飛車角 狼どもの仁義』を同時期にぶつけるという戦略を取りました。この影響により、『無宿』の興行成績は芳しくなく、惨敗したとされており、映画の運命を大きく左右する出来事でした。

まとめ

『無宿』は、名優たちの共演とロードムービーのスタイルが融合した作品で、キャスティングや制作裏話が多くの映画ファンに響く内容となっています。しかし、封切り当初の興行成績は振るわず、時代背景を考慮すると、一筋縄ではいかない映画業界の厳しさを物語っている作品でもあるのです。

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