無言館

無言館の概要

無言館は、長野県上田市古安曽に位置する私設美術館です。この美術館は、戦時中に命を落とした画学生たちを追悼することを目的に1997年に設立されましたが、同時に美術館としての側面も持ち合わせています。館主の窪島誠一郎は、自身の著書の中でこの施設が持つ曖昧な性質について度々言及しています。

設立の背景

無言館が設立されるきっかけは、1977年に出版された『祈りの画集――戦没画学生の記録』にあります。この本の内容に感銘を受けた窪島は、戦没画学生やその遺族の背景にある物語を収集したいという思いを抱くようになります。しかし、具体的な行動には至らなかったものの、この経験が無言館設立へと繋がっていきます。

1995年、信濃デッサン館で開催された槐多忌の際、画家の野見山暁治を招き、互いに戦没画学生について話す機会を得たことが大きな転機となります。窪島は、野見山と共に遺族のもとを訪れ、作品の寄託を依頼する旅を開始しました。この活動は思いのほか多くの人々の協力を得て、次第に実を結ぶこととなります。

無言館の名称の由来

「無言館」という名称には深い意味があります。窪島は、作品が語る言葉がないとも捉えられる一方で、観客には多くのメッセージが伝わるという解釈をしています。ただし、この名付けの背後には、遺族から作品を集めるための名案を行っている最中に思いついた、という実にシンプルな経緯があるとしています。

開館とその後

無言館は、開館してから多くの注目を集めるようになります。初年度は約10万人もの訪問者を迎えましたが、時が経つにつれて入場者数は減少傾向にあるそうです。2008年には、さらなる作品展示のために無言館第二展示館が開設され、展示の幅が広がりました。

また、無言館はその歴史においてさまざまな出来事を経験しています。特に、2004年には慰霊碑「記憶のパレット」が設置されましたが、2005年に発生した赤ペンキ事件は大きな衝撃を与えました。この事件は無言館に何らかの政治的な意図が含まれていたのではないかとも言われており、窪島の意思で赤ペンキの痕跡が残されたことで、今なお多くの人々に語り継がれています。

収蔵と展示

開館時には37名の画学生から約80点の作品が収蔵されていましたが、徐々にその数は増加し、現在では100人以上の画学生の作品約600点を所蔵しています。しかし、収蔵点数が増えたことに伴い、展示スペースが限られているため、展示できない作品も増えてきており、それに対する遺族の不満も表面化しています。

このため、無言館は新たな展示空間を模索し続けているのです。現在も、戦没画学生たちの遺作を後世に伝えるための新たな計画が練られていることでしょう。

無言館はただの美術館ではなく、戦争の影で失われた多くの人々の記憶を生き続けさせるための場所です。窪島誠一郎や野見山暁治の情熱は、訪れる人々にとって強く印象に残ることでしょう。

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