熊谷連隊区

熊谷連隊区（くまがやれんたいく）

熊谷連隊区は、かつて大日本帝国陸軍が徴兵や召集といった兵事事務を行うために国内に設置した地方組織、すなわち連隊区の一つです。埼玉県の一部地域を管轄し、兵役に関わる各種手続きを担当しました。

沿革

この組織は、1907年（明治40年）10月1日に設立されました。これは、日露戦争後の軍備増強として日本陸軍が19個師団体制へ移行するのに伴い、陸軍管区表が改正された（明治40年9月17日軍令陸第3号）結果です。設置当初、熊谷連隊区は第14師管第28旅管の管轄下に置かれました。

設置時の管轄区域は、当時の陸軍管区表（明治40年軍令陸第3号）によって、埼玉県内の大里郡、比企郡、入間郡、児玉郡、秩父郡と定められました。これらの地域は、それまで高崎連隊区が管轄していた一部を編入する形で構成されました。

管轄区域は一度変更されています。1923年（大正12年）3月31日の陸軍管区表改正（大正12年軍令陸第3号）により、新たに市制が施行された川越市がその範囲に加えられました。

熊谷連隊区は、1925年（大正14年）5月1日に廃止されました。これは、日本陸軍が組織の再編成を進めた第三次軍備整理の一環として、陸軍管区表が再び改正（大正14年4月6日軍令陸第2号）されたためです。約18年間の歴史に幕を下ろしました。

廃止に伴い、熊谷連隊区が担当していた地域は二つに分割され、他の連隊区に組み入れられました。

具体的には、川越市、比企郡、入間郡、秩父郡は東京に置かれた麻布連隊区に編入。一方、大里郡と児玉郡は、同じく東京の本郷連隊区の管轄下に移されました。これにより、熊谷連隊区の果たしていた役割は、これらの連隊区に引き継がれることとなりました。

歴代司令官

熊谷連隊区の司令官として記録されている主な人物は以下の通りです。

粟野陽二郎 歩兵少佐：1907年10月3日 - 1910年11月30日
景山呈作 歩兵少佐：1910年11月30日 - 1912年3月9日
粟野陽二郎 歩兵中佐：1912年3月9日 - 1913年2月25日
高梨慶三郎 歩兵中佐：1913年2月25日 - 1915年1月25日
佐藤武文 歩兵中佐：1915年1月25日 - 1916年11月15日
湯地春吉 歩兵中佐：1916年11月15日 -
志賀剛二 歩兵中佐：不詳 - 1920年8月10日
登坂伴次郎 歩兵中佐：1920年8月10日 -

熊谷連隊区は、短期間ながら埼玉県の一部地域の兵事行政を支えた重要な組織でした。その沿革は、当時の軍事体制や地域行政の一端を示しています。

もう一度検索