片岡我童

片岡我童

「片岡我童（かたおか がどう）」は、歌舞伎の世界で受け継がれる役者の名跡の一つです。この名を称する役者の屋号は松嶋屋で、定紋として七つ割丸に二引を、替紋としては追っかけ五枚銀杏を用いています。片岡仁左衛門の名跡と密接な関係を持ち、多くの我童が後に仁左衛門を襲名しています。

初代 片岡我童

初代淺尾國五郎の弟にあたり、1755年から1837年まで生きました。芸の道はまず二代目中村十蔵に師事し、その後初代淺尾爲十郎の門人となります。二代目片岡仁左衛門の早世により約一世紀途絶えていた片岡仁左衛門の名跡を、天明8年（1788年）に再興し、七代目片岡仁左衛門を襲名しました。俳名は初代我童です。

襲名遍歴は以下の通りです。

中村松助
二代目淺尾國五郎
山澤國五郎
七代目片岡仁左衛門（俳名：初代我童）

二代目 片岡我童

初代の養子であり、1810年に生まれ1863年に没しました。当初は七代目市川團十郎の門人から養子となりますが、後に離縁。続いて二代目嵐璃寛に師事しました。その後、七代目仁左衛門（初代我童）の門人となり、さらにその養子として迎えられ、八代目片岡仁左衛門という大名跡を継承しました。

その多様な襲名歴は以下の通りです。

（六代目）市川新之助（成田屋）
三升岩五郎（成田屋）
嵐橘次郎（伊丹屋）
初代片岡我當
二代目片岡我童
八代目片岡仁左衛門

片岡我童（追贈九代目片岡仁左衛門）

二代目の養子として迎えられ、1839年に生まれ1872年に30代半ばで早世しました。芸のキャリアは四代目三桝大五郎に師事することから始まり、後に二代目片岡我童の門人となり、最終的にその養子となりました。夭折したため存命中に仁左衛門を名乗ることはありませんでしたが、死後36年を経た明治40年（1907年）に、十一代目片岡仁左衛門によって九代目片岡仁左衛門が追贈されました。

彼の襲名遍歴は以下の通りです。

三桝梅丸（京桝屋）
二代目片岡松之助
片岡我當
贈九代目片岡仁左衛門（明治40年追贈）

三代目 片岡我童

二代目の三男で、1851年から1895年まで活躍しました。九代目、後に十代目片岡仁左衛門を襲名しますが、その強情な性格と負けん気が災いし、晴れの舞台となるはずだった仁左衛門襲名披露興行を失敗させてしまいます。この出来事を深く気に病んだ彼は、間もなくして亡くなりました。

襲名遍歴は以下の通りです。

初代片岡土之助
片岡松若
三代目片岡我童
九代目片岡仁左衛門
十代目片岡仁左衛門（明治40年改名）

四代目 片岡我童

三代目の子であり、二代目の外孫、さらに三代目の養子という複雑な血縁関係を持つ役者でした（1882年生まれ、1946年没）。後に十二代目片岡仁左衛門を襲名します。しかし、第二次世界大戦後の混乱期、食糧事情の悪さを逆恨みした住み込みの門人によって、妻、四男、女中二人とともに自宅で惨殺されるという悲劇に見舞われました。これは「片岡仁左衛門一家殺害事件」として知られています。

襲名遍歴は以下の通りです。

片岡東吉
二代目片岡土之助
四代目片岡我童
十二代目片岡仁左衛門

十三代目 片岡我童

四代目（十二代目仁左衛門）の長男として1910年に生まれ、1993年に亡くなりました。一家殺害事件で非業の死を遂げた父の後を継ぐ者として、「十三代目仁左衛門」たるべきだとの強い自覚を持っていました。本来であれば五代目我童を名乗るところを、あえて父の仁左衛門の代数を引き継ぐ形で「十三代目我童」と名乗ったとされます。女形として高い評価を得ましたが、生前に仁左衛門を襲名することは叶いませんでした。しかし、その功績を称えられ、死後まもなく十四代目片岡仁左衛門が追贈されました。

襲名遍歴は以下の通りです。

片岡はじめ
片岡ひとし
五代目片岡芦燕
十三代目片岡我童
十四代目片岡仁左衛門（追贈）

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