特色 (印刷)

特色印刷とは？

特色印刷は、CMYKプロセスカラーでは再現できない特殊な色を表現するために、あらかじめ調合されたインクを用いる印刷技術です。スポットカラー、特練色とも呼ばれ、その名の通り、通常の印刷では表現できない「特別な色」を印刷物に施すことができます。蛍光色や金、銀といったメタリックカラー、パステル調の色、そしてCMYKでは表現できない鮮やかな色など、幅広い色表現を可能にします。

特色インクは、通常のプロセスカラーインクに比べて高価なため、印刷コストへの影響も考慮する必要があります。しかし、その独特の色味は、デザインに高級感や個性を加え、消費者の目を惹きつける効果があります。

特色印刷の用途

特色印刷は、様々な印刷物で利用されています。特に、以下のような用途で効果を発揮します。

目を惹きつけたい場合: 雑誌の表紙、ポスター、フライヤーなど、インパクトのあるデザインが必要な印刷物に最適です。蛍光色など、従来のプロセスカラーでは表現が難しい色を用いることで、高い視覚効果を実現できます。
高級感を演出したい場合: 商品パッケージなど、製品の価値を高めたい場合にも有効です。金や銀といったメタリックカラーは、高級感や重厚感を演出するのに役立ちます。
色数を抑えたい場合: 印刷コストを抑えるために色数を少なくしたい場合でも、特色印刷は有効です。2色印刷で、グレースケールでは物足りない表現力に不足感を感じるとき、特色インクを1色加えることで、デザインの幅を大きく広げることができます。例えば、用紙の色に合わせた特色インクを使用することで、より洗練された仕上がりを実現できます。淡い青の用紙に濃い青で印刷するなど、用紙との調和も考慮できます。
特殊な印刷の場合: すでに色がついている印刷対象や透明な印刷対象に白インクを使用したい場合にも、特色印刷が用いられます。漫画雑誌などで見られる、肌色の表現に特色インクを使用するケースも挙げられます。

色の指定方法

特色印刷の発注は、多くの場合、印刷業者に依頼します。業者によっては特色印刷に対応していない場合もあるので、事前に確認が必要です。熱転写プリンターの中には特色印刷に対応しているものもあり、個人でも特色印刷を行うことができます。

紙媒体などのアナログ媒体で色を指定する場合、印刷業者にカラーチャート（色票、色見本帳、カラーガイドなど）を提示します。色票に番号が振られている場合は、その番号を記入し、特色インクを使用する箇所を明記します。フルカラー印刷と併用する場合は、その旨も明記します。また、プロセスカラーを混色した色を使う場合は、各色の濃度をパーセンテージで指定します。

例えば、DICカラーガイドの蛍光ピンク（DIC 586s）を使用する場合、以下のように指定します。

フルカラー印刷併用の場合：「DIC 586s＋フルカラー」
50%金赤の場合：「DIC 586s＋M50%＋Y50%」
黒の場合：「DIC 586s＋Bk100%」（多くの場合、CMYの混色で印刷されます）

デジタルデータで発注する場合は、印刷業者に対応するソフトウェアを用いて原稿を作成する必要があります。ソフトウェアや色数によって原稿作成方法は異なるため、詳細は印刷業者に確認が必要です。

印刷工程

特色印刷は、一般的に色分解（分版）と呼ばれる工程を経て印刷されます。

フルカラー＋特色印刷の場合

1. プロセスカラーで印刷する箇所の色分解を行い、CMY（場合によってはBkも）それぞれの版を作成します。
2. 特色インクを印刷する箇所用の版を作成します。
3. プロセスカラーの版を1色ずつ印刷します。
4. 特色インクの版を印刷します。

2色印刷の場合

2色印刷にも様々な方法がありますが、少なくとも1色は特色インクを使用することが一般的です。ここでは、プロセスカラー2色を代用して作成されたデジタル原稿を特色印刷する方法を例に挙げます。

1. 発注者があらかじめ色分解しておいたプロセスカラー2色（例えばシアンとマゼンタ）から、それぞれの版を作成します。
2. 分解された版に、指定されたインクを乗せて印刷します。例えば、マゼンタ版に朱色、シアン版に濃緑色といった具合です。

漫画雑誌では、朱色とキープレート（濃い焦げ茶色）の組み合わせで肌色を表現することがあります。

主要インクメーカーとソフトウェア

特色印刷に関連する主要なインクメーカーには、DIC（旧大日本インキ化学工業）、東洋インキSCホールディングス（旧東洋インキ製造）、PANTONEなどがあります。

特色印刷向けの機能を持つ主なソフトウェアには、Adobe Photoshop、Adobe Illustrator、Adobe InDesign、Quark XPressなどがあります。これらのソフトウェアでは、スポットカラーモードやマルチチャネルモードなどを用いて色分解や特色インクの指定を行います。

参考文献

特色印刷 - 二光印刷（2014年11月21日時点の情報）
特色インキを使って、特別な印刷ツールを作ろう！ - グラフィック（2014年11月21日時点の情報）
2色印刷の色表現 - インフォルム（2014年11月21日時点の情報）

関連項目

DICカラーガイド、プロセスカラー、色空間、色分解、DTP

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