犬はどこだ

『犬はどこだ』 - 米澤穂信の推理小説

『犬はどこだ』は、2005年に東京創元社から発表された米澤穂信によるミステリー作品です。この小説は、犬探しを専門とする探偵事務所を開業した主人公、紺屋長一郎と助手の半田平吉が織りなす物語となっています。

概要

長一郎が立ち上げた調査事務所は「紺屋S&R」と名付けられ、初の依頼として持ち込まれたのは、彼が過去に勤務していた東京を離れ故郷に戻った孫娘、桐子の捜索です。依頼者は桐子の祖父、佐久良且二。もう一方の依頼は、古文書の解読を求める百地啓三からのものでした。この二つの事件が交互に描かれ、物語が進行するにつれて明らかになっていく真相は、予想を超えた複雑なものとなります。

物語は長一郎とハンペー、それぞれの視点から語られ、彼らの捜索や調査が交じり合いながら進展します。特に、長一郎は桐子の行動に隠された真実を追求し、ハンペーは欲深い古文書を通じて歴史的な背景を解き明かそうと奮闘します。

あらすじ

長一郎は、皮膚病を抱えながらも自身の新たな第一歩として「紺屋S&R」を開業しました。しかし、最初の依頼である桐子の捜索が始まると、長一郎は驚くべき事実に直面します。桐子は大学卒業後に東京でシステムエンジニアとして働いていましたが、突如失踪してしまいます。

調査を進めるうちに、長一郎は桐子がかつて働いていた職場や友人、親族を訪ね、その足取りを追います。長一郎の調査の過程で浮かび上がるのは、桐子の奇妙な行動や、人間関係の不自然さ。果たして彼女はどこに行ってしまったのか、そしてその背後には何が潜んでいるのでしょうか。

一方、ハンペーは古文書の解読に着手し、歴史家の手を借りることとなります。この古文書には、地域の歴史や、桐子に関連する重要な情報が隠されていました。ハンペーの調査が進むにつれて、過去の事件や、桐子に関する暗い秘密が蠢き始めます。

長一郎とハンペーは、互いに交じり合いながら進む調査の中で不気味な陰影に引き込まれ、やがて未曾有の事件の全貌が明らかになっていきます。この先に待ち受ける運命は、依頼者たちにとっても予想もしないものでした。

結末

調査の結果、江馬常光の『戦国という中世と小伏』に記された古文書の背後には、戦国時代の人々の生き様や彼らが直面した苦労が映し出されていました。一方、桐子はネット上でのストーカー行為に巻き込まれ、心身共に追い詰められた結果、壮絶な決断を下すことになります。

最終的に、長一郎はすべてを知りつつも桐子を救えないまま、彼女がたどり着いた結論に胸を痛めるのです。依頼が解決されたものの、長一郎にとっての恐怖は増し、護身用のナイフを持つようになった彼の新たな生活が始まります。

登場人物

• - 紺屋長一郎: 調査事務所の所長。過去の職業病に悩まされつつ新たな道を模索する。
• - 半田平吉: 長一郎の助けとなる後輩探偵。純粋な憧れを抱きつつ捜査に取り組む。
• - 佐久良桐子: 依頼者の孫娘。悲劇的な状況に陥りながら逃避行を企てる。

この小説を通して、米澤穂信は探偵ものの新たなスタイルを提示し、物語の進展と共に緊迫感あるストーリー展開を織り成します。

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