状態遷移図:システムの状態変化を視覚的に表現
状態遷移図は、システムの状態変化を視覚的に表現するために用いられる図です。
有限オートマトンや状態機械といった、状態の変化によって動作が決定されるシステムをモデル化するときに特に有効です。状態遷移図では、システムの状態をノード(頂点)で、状態間の遷移をエッジ(辺)で表現したグラフ構造を用います。これにより、システムの挙動を直感的に理解しやすくなります。
状態遷移図の種類と表現方法
状態遷移図にはいくつかの種類があり、それぞれ表現方法が異なります。代表的なものとして、以下のものがあります。
古典的な有向グラフ形式: 最も基本的な形式で、ノードが状態を表し、エッジが入力や出力と共に状態遷移を表します。ムーアマシンでは各状態に出力を、ミーリマシンでは各遷移に入力と出力を付記します。受容状態は二重円で表現されることもあります。
ムーアマシン: 各状態に出力を関連付け、状態遷移は入力によって決定されます。エッジには入力のみが記述されます。
ミーリマシン: 各遷移に入力と出力を関連付けます。エッジには入力と出力が記述されます。
ハレルの状態遷移図 (Harel statechart): 上位状態や並列状態を表現できる拡張された形式です。状態内部の活動をモデル化することも可能です。複雑なシステムのモデリングに適しています。
UML状態機械図: UML (Unified Modeling Language)で標準化された状態遷移図です。開始状態と終了状態を明確に示し、状態遷移の条件を記述します。並列状態の開始と終了を表現するjoin/forkも特徴です。開始状態は塗りつぶされた円、終了状態は中抜きの円で表されます。状態は四角形で表し、状態名と状態内で行われる活動を記述します。遷移は矢印で表し、条件付き遷移を記述することができます。
状態遷移図の拡張
状態遷移図は、より複雑なシステムをモデル化するために様々な拡張が提案されています。
複数の状態への同時遷移: システムが複数の状態を同時に持つことを許容する拡張です。ペトリネットはこの拡張を形式化したものです。
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フローチャートとの統合: イベント駆動型と
ワークフロー駆動型の両方のソフトウェア開発をサポートするために、
フローチャートとハレルの状態遷移図を統合した形式も存在します。
状態遷移図の作成と利用
状態遷移図は、手描きや専用のモデリングツールを用いて作成することができます。UML状態機械図を描くツールも多く、ソフトウェア開発において状態遷移図は設計や実装段階で重要な役割を果たします。状態遷移図からソフトウェアを自動生成するツールも存在します。ゲーム制作などでも、状態遷移図はゲームの挙動を設計するのに有効な手段となります。
参考文献
状態遷移図に関する参考文献には、UMLに関する書籍や、オートマトン理論に関する専門書などがあります。これらの文献を参照することで、より深く状態遷移図について理解を深めることができます。 具体的には、AmblerによるUML状態機械図に関する書籍や、Sipser, Hopcroft and Ullman, Boothによるオートマトン理論の教科書、Samekによる実践的な状態図に関する書籍などが挙げられます。 また、関連規格としてJIS X 0131、ISO/IEC 11411も参考になります。
まとめ
状態遷移図は、システムの状態変化を視覚的に表現する強力なツールです。その種類や表現方法、拡張を理解することで、様々なシステムのモデル化や設計に活用できます。適切なツールや手法を選択することで、複雑なシステムの挙動を明確に記述し、開発効率の向上に貢献します。様々な形式が存在し、目的に応じて適切な形式を選択することが重要です。