状況曲線

概要

『状況曲線』は、松本清張による長編推理小説で、1976年から1978年にかけて『週刊新潮』に連載され、1988年には新潮社から単行本として発行されました。この作品は、建設業界における談合を背景にした連続殺人事件を中心に展開されるミステリーです。また、1994年にはテレビドラマ化され、幅広い視聴者に親しまれています。

あらすじ

物語は梅雨の昼下がり、東京都心の有楽町近くの喫茶店「DATE」で始まります。日星建設の専務・味岡、大東組建設の成瀬、そして共栄建設の中原の3人の紳士たちが集まり、これから「東明経済研究所」へ向かうことになります。この研究所は、官僚との強いつながりを持つ巨勢堂明が所長を務め、談合を取り仕切る場所です。なぜ彼らはこの場に集まったのでしょうか。

会合後、味岡は巨勢の事務所を再訪しますが、そこで不審な紙袋を見つけます。成瀬が贈ったと思われるその中身を確認しようとした瞬間、神邦ビルの屋上で死体が発見され、事件が発覚します。このタイミングで捜査が始まり、味岡は疑惑の目にさらされます。新聞にも「不審な男」として取り上げられ、彼の心には不安が募るばかりです。

その後、味岡の周りで奇妙な出来事が相次いで発生し、彼の関与が疑われます。彼自身もこの連続殺人事件に巻き込まれていき、周囲の人々との関係が緊迫したものへと変化していきます。

主な登場人物

• - 味岡正弘: 日星建設の専務で、事件に巻き込まれる主人公。
• - 成瀬敬一: 大東組建設の専務。談合に関与している。
• - 中原武夫: 共栄建設の常務。会合に参加する紳士の一人。
• - 巨勢堂明: 非公式な談合組織「南苑会」の指導者。官僚に対して強い影響力を持つ。
• - 柳原孝助: 金融ブローカーで、談合の裏に潜む人物。
• - 照葉: 旅館「楓荘」の芸者で、日星建設との接点を持つ。
• - 矢田部護親: 二俣署の刑事で、事件捜査にあたる。

エピソード

作中には、実在の人物をモデルにしたキャラクターが登場します。特に柳原孝助は、著者が聞いた実話を基にしています。このようなリアリティが、物語をさらに興味深いものにしています。

テレビドラマ化

1994年には、松本清張の作品を原作としたテレビドラマ「松本清張スペシャル・状況曲線」が放送されました。このドラマでは原作の要素を活かしつつ、キャラクター関係を簡略化しています。視聴率も良好で、多くの視聴者に支持されました。

まとめ

『状況曲線』は、清張の独自の視点から描かれた陰謀と殺人事件の物語であり、公共事業という日本特有のテーマを背景にしています。また、作品を通じて人間の欲望とその影響に目を向けることができ、社会問題にも通じる深い洞察を持っています。建設業界の裏事情や談合の実態に迫ることで、読者に強いメッセージを残す作品となっています。

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