狂人軍

漫画『狂人軍』の概要

『狂人軍』（きょうじんぐん）は、著名な漫画家藤子不二雄による日本の漫画作品で、安孫子素雄（後の藤子不二雄Ⓐ）が単独で執筆しました。この作品は1969年から1970年にかけて、秋田書店の『少年チャンピオン』で連載されていました。全14話で構成されていますが、その内容は精神疾患をテーマにした過激で不条理なギャグに満ちています。

主題と内容

『狂人軍』では、登場人物全員が自ら「きちがい」と名乗り、精神的な疾患を ユーモラスに描いています。そのため、実在の人物や野球選手、さらには精神障害者に対する侮蔑とも取れる内容が含まれています。このような理由から、作品は連載終了後すぐに封印されています。また、一度も単行本化されていないため、作品が世に出ている機会はほとんどありません。作品タイトルの「狂人軍」は一見すると野球チームのようですが、実際には野球とは愚行が繰り広げられるドタバタの舞台となっているのです。

ストーリー

物語は、平凡なサラリーマン、丸目蔵人が主人公です。彼はある日、無断欠勤の理由でドライブ中に「狂楽園球場」と呼ばれる野球場を見つけます。しかし、場内には「気ちがい以外は入れない」と告げられ、進入を許されません。そこで彼は発狂したフリをして球場に侵入。ところが、狂人軍の打者である王選手が放ったホームランボールが蔵人の顔面に直撃します。彼は発狂状態で意識を回復しましたが、何とか生き延びた後、次第に狂人軍の一員としての地位を獲得していきます。

蔵人は、自らの運命を変えるため狂人軍に入団し、4番打者となろうと奮闘します。しかし、彼の活動は周囲とのトラブルを引き起こし、次第に混乱を生むことに。最終的には頭をバットで殴られ、正気を取り戻してしまいます。こうした狂気と混沌の中で、彼の生活は大きく変わってしまうのです。

登場人物

• - 丸目 蔵人: 物語の主人公。サラリーマンから狂人軍のメンバーに転身。最初は強気で入団するも、次第に主役の座をキチ吉に奪われる。
• - 丸目 スズ子: 蔵人の妻。夫同様に狂人軍に振り回され、キチ吉を実の息子のように可愛がるようになる。
• - キチ吉: 若いピッチャー役。蔵人を追い詰める存在感を持つ。
• - ナガヒマ: 4番打者で暴力的な性格。
• - 王選手: 狂人軍の3番打者。蔵人が発狂する原因を作った張本人。
• - カワカム監督: 狂人軍の監督。彼のコメディチックなリーダーシップが物語に味を出しています。

封印作品としての評価

『狂人軍』は、ファンの間では「藤子漫画史上最もアナーキーな作品」と評され、西の藤子不二雄Ⓐ作品の中でも際立ったデンジャラスな作品として位置付けられています。そのため、作品の閲覧機会がほとんどなく、伝説的な存在となっているのです。

作品はその個性的なキャラクターやユニークなストーリー展開から、藤子不二雄作品の中でも特に異彩を放っていますが、思想的・社会的な規範に挑戦する内容により、時代にそぐわないとして封印されたことは、文化的議論を呼ぶ素材ともなっています。今後も封印されたままである限り、その実態と共に語り継がれることになるでしょう。

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