狂熱の蠍団 ヴァージン・キラー

狂熱の蠍団 ヴァージン・キラー

ドイツを代表するハードロックバンド、スコーピオンズが1976年にリリースしたスタジオアルバム。彼らにとって通算4作目にあたる本作は、その音楽的な内容以上に、オリジナルのアートワークが国際的に大きな波紋を呼んだことで知られています。

オリジナル盤のジャケットには、思春期を迎える前の少女のヌード写真が使用されていました。このデザインは、発表当時から各方面で強い批判を浴び、「児童ポルノにあたるのではないか」「倫理的に問題がある」といった指摘が相次ぎました。結果として、多くの国で販売規制や倫理規定に抵触する懸念から、アルバムのアートワークは差し替えられることとなります。特に米国では、発売当初から別のデザインに変更されて流通しました。

日本国内では比較的長期間にわたりオリジナルジャケットが使用され続けましたが、時代の変化や国際的な販売基準への配慮から、2007年に発売された紙ジャケット仕様のCDシリーズ以降は、欧米盤と同様に、オリジナルLP盤の裏ジャケットに採用されていたバンドメンバーの写真へと変更されました。

この物議を醸したジャケット写真に関して、バンドメンバーの間でも見解は異なっています。ボーカルのクラウス・マイネは、後に成人したというモデルの女性本人と再会した際のエピソードを語っており、彼女自身はこの写真について「自分にとっても良い思い出」と特に否定的な感情は抱いていなかったと述べています。一方で、当時ギタリストとして在籍していたウリ・ジョン・ロートは、2016年のインタビューで、自身がバンドにいた時期の作品のアートワーク全般に不満を持っており、特に『ヴァージン・キラー』のジャケットについては「本当に酷かった」と強く批判的な立場を示しています。この対照的な発言は、アルバムを取り巻く複雑な背景を物語っています。

音楽的には、当時のバンドが追求していたハードロックサウンドが確立されており、クラウス・マイネとルドルフ・シェンカーによる楽曲に加え、ウリ・ジョン・ロートが作曲したサイケデリックな要素も含む楽曲が収められています。

本作に収録されている楽曲は以下の通りです。

• - 幻の肖像 (Pictured Life) (3:21) - K.Meine / U.Roth / R.Schenker
• - キャッチ・ユア・トレイン (Catch Your Train) (3:32) - K.Meine / R.Schenker
• - イン・ユア・パーク (In Your Park) (3:39) - K.Meine / R.Schenker
• - バックステージ・クイーン (Backstage Queen) (3:10) - K.Meine / R.Schenker
• - ヴァージン・キラー (Virgin Killer) (3:41) - U.Roth
• - ヘル・キャット (Hell Cat) (2:54) - U.Roth
• - クライング・デイズ (Crying Days) (4:36) - K.Meine / R.Schenker
• - 暗黒の極限 (Polar Nights) (5:04) - U.Roth
• - イエロー・レイヴン (Yellow Raven) (4:58) - U.Roth

『ヴァージン・キラー』は、その衝撃的なアートワークゆえに語られることが多い作品ですが、スコーピオンズの初期の重要なサウンドが収められたアルバムとしても、彼らのディスコグラフィーにおいて特異な位置を占めています。

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