狩りはこりごり

『狩りはごりごり』：トムとジェリーのアフリカ大冒険

1962年公開のトムとジェリー作品『狩りはごりごり』は、ジーン・ダイッチ監督による、アフリカのジャングルを舞台にした痛快コメディです。短気な主人クリント・クローバーとトム、そして、いつも通り勝手気ままなジェリーが、猛獣狩りに繰り出します。

物語は、ゾウのシドニーを借りての狩猟から始まります。しかし、ジェリーのいたずらによって、トムと主人はゾウの上で振り回され、散々な目に遭います。ジェリーの悪戯は留まることを知らず、トムと主人をゾウごと転倒させたり、ライオンを呼び寄せたりと、ドタバタ劇は加速していきます。

特に印象的なのは、ジェリーが猟銃を水筒とすり替えたシーンです。結果、ライオンは主人に襲いかかり、トムは主人からしっぺ返しを食らいます。主人も「トムを連れてくるんじゃなかった」と後悔し、水筒の水でトムをからかう始末。この一連の騒動は、トムと主人の間のコミカルな関係性を際立たせています。

その後、一行はサイと遭遇します。トムがジェリーをゾウの鼻に隠したため、ネズミ嫌いのシドニーは彼らを置いて逃げ出してしまいます。残されたトム、ジェリー、そして主人は、サイに次々と突き飛ばされ、壮絶な追いかけっこを繰り広げます。しかし、皮肉にも、３人はサイを下敷きにしてノックアウト。最後は、シドニーとジェリーが、生け捕りにしたサイ、トム、そして主人を宙吊りにし、運んでいくという、予測不能な結末を迎えます。

本作の見どころは、MGM作品でおなじみのレオ・ザ・ライオンではなく、劇中に登場するライオンがオープニングに登場する点です。クレジットも通常とは異なり、「A METOLO-GOLDWYN-MAYER CATOON」と表示されます。この変更は、作品のユニークな雰囲気をさらに高めています。

キャラクターそれぞれも魅力的です。トムはジェリーのいたずらに翻弄されながらも、最後は主人と共にサイに追いかけられるという、お決まりのパターンとは一味違った展開を見せています。ジェリーは、いつものようにトムと主人を巧みに操り、物語を面白く盛り上げます。短気な主人クリント・クローバーは、本作が最後の登場作品であり、彼のコミカルな振る舞いは記憶に残るものとなっています。ゾウのシドニーはネズミ嫌いが災いし、トム達を置き去りにするコミカルな姿を見せています。そして、ライオンとサイは、物語に緊張感とユーモアの両方を加える重要な役割を果たしています。

日本での放映では、TBS系列などで1964年から1990年代まで放送され、カートゥーンネットワークでも時折放送されています。しかし、TBS版ではライオンのシーン、カートゥーンネットワーク版ではトムの耳が聞こえなくなるシーンがカットされているなど、版によって差異があります。ビデオ版やDVD版では、これらのカットシーンは収録されているため、完全版を楽しみたい方はそちらを視聴することをお勧めします。

『狩りはごりごり』は、予測不能な展開とユーモラスなキャラクター、そして、独特の演出が魅力のトムとジェリー作品です。アフリカのジャングルという異国情緒あふれる舞台設定も、作品全体の魅力を高めています。トムとジェリーシリーズの中でも特に人気が高い作品の一つであり、一度は見ておく価値のある作品と言えるでしょう。

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