狩猟採集社会

概要

狩猟採集社会とは、野生の動植物を狩ったり集めたりすることで生活を営む社会のことを指します。このタイプの社会は、人類が農耕を始める新石器時代以前まで広がっていたと考えられています。今日でも、地球上にはこのような社会が存在しており、北極圏から熱帯雨林、さらには砂漠地帯にまで及びます。

19世紀から20世紀にかけては、社会進化論が広まり、狩猟採集社会は農耕社会に劣るものと見なされることもありました。しかし、近年の研究では、狩猟採集社会が必ずしも劣位にあるわけではなく、文化中心主義的な視点からの理解が必要だとされるようになりました。特にアジアの狩猟採集社会では、政治的な権力関係に基づいた狩猟や採集の分業が展開されることもあります。また、ほぼ全ての狩猟採集社会は周囲の農耕社会との交易や関係性を持っているのです。

社会構造の多様性

狩猟採集社会の社会構造は一様ではありません。中には首長が存在する社会もあれば、そのような存在がない社会もあります。一般的には、首長が権力を持つことは少なく、集団の意見がプラスに作用していると言われています（ピエール・クラストルの著作を参照）。ただし、戦時下では権力が一人に集まることもあります。

以前は、狩猟採集民が厳しい食料事情に直面していると考えられていましたが、さまざまな民族誌の研究から、彼らは生存に必要な量の倍以上の食料を生産できることがわかりました。農業と比較して労働時間が少なく、余暇を持つことができることも明らかにされています。依然として専門的な職業や役人は少ないですが、性別による作業の分担が存在することも確認されています。

農耕社会との境界

現在では、狩猟採集社会と農耕社会の区分けは曖昧になっています。一部の狩猟採集民は、食料を増やすために森林の手入れを行うなど、農耕的な要素を取り入れているのです。また、定住化政策の影響で、伝統的な採集活動が難しくなり、食料の一部を配給に依存したり、農耕民を手伝うことで得ることもあります。

平等主義社会の幻想

アフリカの狩猟採集民、特にブッシュマンやピグミーには、独自の食料分配の習慣が見られます。彼らは得た食料を何度も分配し合うことで、社会的な平等を維持しています。これは、マーシャル・サーリンズが提唱した互酬性の原則によって支えられていますが、彼らの分配が権威を生むことはありません。

しかし、ブッシュマンの例を見ても、優れたハンターはわざと獲物を控えることで、全体の供給を維持しようとする姿勢が見えます。資源の所有への欲望が無く、常に仲間の威信を平準化する過程が平等な関係を生んでいるとの指摘もあります。

ワイルドヤム問題

中央アフリカに住むピグミーは、農耕民との密接な関係を持ちながら熱帯雨林に依存して生きています。かつては彼らがこの地域の先住民とされることもありましたが、最近の研究により、実際には農耕民との農作物の交換や自身の農耕活動に依存していることが明らかになりました。さらに、考古学的証拠も不十分であるため、純粋な狩猟採集生活が成立する環境ではないとされています。ただし、他の調査からは、熱帯雨林でも自給自足が可能であることも示唆されています。

結論

狩猟採集社会は、ただ一つの形態ではなく、多様性に富んだ人類の歴史の重要な側面を示しています。これらの社会は、周囲の文化や環境に応じて進化し続け、現在においてもさまざまな形態で存在しています。

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