狩野博幸

狩野博幸：近世日本絵画研究の第一人者

狩野博幸氏（1947年9月4日生まれ）は、日本の近世美術史研究において重要な役割を果たした著名な研究者です。京都国立博物館名誉館員を務めた氏の専門は日本近世美術史であり、特に江戸時代の絵画に関する深い造詣と、数々の画期的な展覧会企画によって広く知られています。

福岡県糸島市出身の狩野氏は、九州大学文学部哲学科美学・美術史専攻を卒業後、同大学大学院文学研究科博士課程に進学、中退後、帝塚山大学で助教授として教鞭を執りました。

1980年には京都国立博物館へ研究員として入職、その後、美術室長、京都文化資料研究センター長を歴任しました。博物館勤務時代には、日本の美術史に新たな光を当てる数々の画期的な展覧会企画に携わりました。その中には、2000年の「没後200年 伊藤若冲」展や、2003年の世界的にも話題となった「The Art of Star Wars（スター・ウォーズ）」展、そして2005年の「曾我蕭白 無頼という愉悦」展など、多様なテーマと斬新な企画で高い評価を得た展覧会が含まれます。2006年には、文化庁海外展帰国記念「18世紀京都画壇の革新者たち」展を最後に京都国立博物館を退職、同志社大学文化情報学部教授に就任し、2018年に定年退職を迎えています。

狩野氏の研究活動は、単なる学術的な成果にとどまりません。数多くの著書や編著書は、一般大衆にも分かりやすく、魅力的な形で近世日本絵画の世界を紹介しています。代表的な著書として、『近世風俗画』（全5巻）、『伊藤若冲大全』、『新発見・洛中洛外図屏風』、『曾我蕭白-荒ぶる京の絵師』などがあり、これらは近世絵画研究の重要な参考文献となっています。また、伊藤若冲や曾我蕭白といった、従来あまり注目されてこなかった画家の作品や生涯を詳細に研究し、彼らの芸術的才能を再評価する役割を果たしました。さらに、『江戸絵画の不都合な真実』や『江戸絵画　八つの謎』など、従来の通説を覆すような大胆な視点を取り入れた著作も発表し、常に新たな視点を提示し続けています。

編著・監修作品においても、狩野氏の幅広い知識と深い洞察力が遺憾なく発揮されています。例えば、『歌麿』、『曽我蕭白』、『清長と錦絵』といった、浮世絵や近世絵画の様々な分野を網羅した作品が多数あり、それぞれの画家の芸術性や歴史的背景を分かりやすく解説することで、多くの人に日本美術の魅力を伝えています。

狩野博幸氏の功績は、単なる研究者の枠を超え、日本の近世美術史を広く一般に理解させ、その魅力を伝えることに大きく貢献しました。その豊富な知識と鋭い洞察力、そして分かりやすい解説は、後進の研究者や美術愛好家たちに多大な影響を与え続けています。今後も、氏の研究成果が日本美術史研究の進展に大きく貢献していくことは間違いありません。

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