独身の貴族

独身の貴族

『独身の貴族』は、アーサー・コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズシリーズの一作で、1892年に『ストランド・マガジン』に初めて発表され、その後短編集『シャーロック・ホームズの冒険』にも収録されました。本作は、全56作品の短編の中でも10番目に位置付けられています。

あらすじ

物語は1887年に始まります。セント・サイモン卿とその婚約者ハティ・ドーランの結婚式が執り行われる中、ハティは突然姿を消してしまいます。この異変に気づいたサイモン卿は、名探偵シャーロック・ホームズに調査を依頼します。式の最中、ハティの様子がおかしくなり、披露宴の途中で自室に引きこもってしまい、その後帰らぬ人となってしまいます。

ハティの父親が様子を見に行くと、彼女は完全に行方不明となっていました。その後、公園で花嫁の衣装が見つかり、紙切れには何かのメモが残されていました。警察はこのメモが事件の手がかりになると考える一方で、ホームズはメモの裏に残された伝票に目をつけます。

伝票から特定のホテルを特定したホームズは、急いで現場に向かいます。その間に、料理屋がホームズのもとを訪れ、夕食の準備が進められます。帰宅したホームズは数人の来客があると告げ、間もなくしてセント・サイモン卿と失踪したハティ、そして結婚式に参列していた見知らぬ男フランシス・モールトンが現れます。

真実の解明

ホームズの指導を受けた3人は、事件の真実を物語ります。ハティとモールトンは、8年前にアメリカの鉱山町で婚約していました。しかし、モールトンが貧乏であることから、ハティの父親は婚約を破棄し、彼女をサンフランシスコへ連れて行きます。それでも諦めきれないモールトンは彼女を追い求め、秘密裏に会っていたのです。

モールトンは成功する意志を持ち、結婚式を挙げてから新天地であるモンタナ州に向かう計画を立てました。だが、各地の鉱山でインディアンの襲撃に遭い、消息を絶ちます。ハティは彼の名前を犠牲者リストで目にし、心の中で失った愛を諦める決心をします。

それから年月が経ち、ハティはセント・サイモン卿と結婚することになりました。しかし、モールトンはインディアンの捕虜として生き残り、逃げ出した後、彼女を追い求めてイギリスにやって来たのです。結婚式の日、モールトンは教会内で待機しており、ハティは彼に気づきます。彼との再会のため、メモを受け取り、披露宴を抜け出しました。

結末

ホームズは、二人が隠れていたホテルを巡り、そのホテルがモールトンの滞在先と知ります。彼は真実をセント・サイモン卿に告げることを心掛けますが、卿は深い失望に包まれ、ホームズの誘いを断ります。事件は解決しますが、愛の物語と運命の皮肉が残されたままとなります。

本作は、ミステリーとしての巧妙さと同時に人間の心の闇を浮かび上がらせる点が印象的な作品です。

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